研究課題
申請者は、致死的難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の根治的治療法の確立を最終的な目標としている。我々は先行研究において、SOD1変異を有するALSモデルの運動ニューロン変性に小胞体ストレスが関与し、さらに抗小胞体ストレス作用を有するDerlin-1およびBiP、DJ-1の過剰発現が変異SOD1による神経変性を抑制することをin vitroの実験系を用いて明らかにした。平成25年度の計画として、弧発性および家族性ALS患者由来のiPS細胞を用いて、ALS病態における小胞体ストレスの関与を解明するために、①疾患患者由来iPS細胞から脊髄運動ニューロンへの分化誘導、および②野生型および変異型(R521C、R514S、G492Efs)FUS発現運動ニューロンにおける各種小胞体ストレスマーカーの発現の差異を検討した。①については弧発性ALS患者7名および家族性ALS患者3名(SOD1H46R変異1例、FUSG492Efs変異1例、その他1例)、脊髄性筋萎縮症患者2名由来のiPS細胞を用いて運動ニューロンへの分化誘導を行った。現在より効率的な運動ニューロンへの安定的分化法の確立を目指している。②については野生型および変異型(R521C、R514S、G492Efs)FUSをマウス運動ニューロン様の培養細胞(NSC-34細胞)に遺伝子導入し、小胞体ストレス各種マーカーの発現の差異を検討した。ウェスタンブロット法での解析では、変異FUSを発現する細胞において、ATF6およびBiP、GRP94、Calnexin、Caspase-12,CHOPの蛋白発現が亢進しており、FUS変異を有するALSにおいても小胞体ストレスが関与する可能性が示された。
3: やや遅れている
平成25年度の計画として、弧発性および家族性ALS患者由来のiPS細胞を用いて、ALS病態における小胞体ストレスの関与を解明するために、①疾患患者由来iPS細胞から脊髄運動ニューロンへの分化誘導、および②iPS細胞由来の脊髄運動ニューロンにおける各種小胞体ストレスマーカーの比較を計画していた。しかし現時点では、患者由来のiPS細胞から効率的な運動ニューロンへの安定的分化が確立しておらず、その点から研究はやや遅れている。一方で、野生型および変異型FUSを導入したマウス運動ニューロン様の培養細胞を用いた研究では、昨年に引き続いて小胞体ストレスの関与を示唆する結果が得られており、着実な進展が見られている。
患者由来のiPS細胞から効率的な運動ニューロンへの安定的分化については、iPS細胞から神経系への分化経験が豊富な熊本大学発生医学研究所 江良択実研究室と共同研究を行うことで現状を打開する予定である。またFUS遺伝子変異を有するALSの病態については、野生型および変異型(R521C、R514S、G492Efs)FUSと結合するタンパク質を網羅的に解析し、小胞体ストレス誘導に関わるKey factorを同定する予定である。
iPS細胞の作製・維持および運動ニューロンへの分化には継続的な資金が必要で有り、その資金を確保するために次年度使用額をもって調整する必要があったため。iPS細胞の作製・維持および運動ニューロンへの分化には、細胞培養デイッシュ、細胞培地、血清、抗生物質ほかの培養のための試薬および細胞培養器、細胞培養用安全キャビネットなどが必要である。
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