研究課題/領域番号 |
24591271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
久保田 龍二 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70336337)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HTLV-1 / HAM / 細胞傷害性Tリンパ球 / 動物モデル |
研究概要 |
HAMの脊髄ではHTLV-1感染CD4陽性細胞とHTLV-1特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が浸潤し、脊髄内でHTLV-1特異的炎症を起こしHAMが発症していると考えられている。HTLV-1感染CD4陽性細胞とHTLV-1特異的CTLをマウスに移入することでHAM動物モデルを作成し、新規治療法開発のツールとすることが本研究課題であり、本年度は以下の研究を行った。 HAM患者より末梢血リンパ球を分離しDNA抽出後、PCRにてHLAを同定した。HLA-A2またはHLA-A24陽性者の10例のHAM患者のリンパ球を用いて、HTLV-1感染CD4陽性細胞株およびHTLV-1 Tax特異的CD8陽性CTL株の樹立を試みた。末梢血リンパ球よりCD4陽性細胞をマグネットビーズを用いて分離し、IL-2存在下で長期培養した。HTLV-1感染細胞株は2ヶ月目までは全例順調に増殖したがそれ以降は増殖が低下し、最終的に3例で安定して増殖する感染細胞株がえられた。 HTLV-1特異的CTL株については、同一患者の末梢血リンパ球よりCD8陽性細胞またはHTLV-1 Tax/MHCテトラマー陽性細胞をマグネットビーズで分離した。同じHLAを持つ非感染者の末梢血リンパ球をマイトマイシンCで処理し、HLA-A2拘束性のTax11-19またはHLA-A24拘束性のTax301-309エピトープを合成したペプチドをパルスした。これをHAM患者より分離したCD8陽性細胞またはHTLV-1 Tax/MHCテトラマー陽性細胞に添加後IL-2存在下で混合培養し、この刺激操作を数回繰り返した。CTLの状態についてはHTLV-1 Tax/MHCテトラマーにてモニターし、HTLV-1特異的CTL株を作成した。しかしながら、動物実験に用いるレベルの細胞数に達せず動物実験にまでいたっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の重要な点は、ヒトのHAMの脊髄で観察された浸潤HTLV-1感染CD4陽性細胞およびHTLV-1特異的CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によるHTLV-1特異的炎症を両細胞を移入した動物の脊髄で再現し、これによりHAM発症モデルを作成し、さらに新治療法開発のツールとすることである。これを実現するためには、最低10の6乗オーダーの細胞数が必要になると考えられる。現時点ではHTLV-1感染CD陽性細胞株3株は十分な細胞数に達しているが、HTLV-1特異的CTL株は十分な細胞数に達しておらず、本年度はマウスへの移入実験を行うことができなかった。HTLV-1特異的CTLを大量培養するために培養方法を改善する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在HTLV-1特異的CTL株の大量培養には至っていないので、フィーダー細胞の不活性化をマイトマイシンCから放射線照射に変更したり、IL-2以外にIL-15 などのサイトカインをさらに添加することで、大量培養を図る。 次に大量培養したHTLV-1感染CD4陽性細胞株とHTLV-1特異的CD8陽性CTL株を、NOGマウスに腹腔内投与し、痙性対麻痺等の神経症状の観察を行う。症状発現が軽微な場合は、投与する細胞を活性化して用いる。また、HTLV-1ウイルス量の多いHAM患者のリンパ球全体をNOGマウスに投与し、脊髄症状を起こすか検討する。HTLV-1感染CD4陽性細胞のみ、HTLV-1 Tax特異的CTLのみ、または両細胞の投与で中枢神経症状の炎症細胞浸潤に差があるか免疫組織学的に検討する。次に脊髄症状をおこしたマウスを解剖し、各種抗体を用いた免疫組織学的検討を行い(CD3、CD4、CD8等)、中枢神経系に炎症細胞の浸潤があるのか、浸潤細胞はCD4およびCD8陽性細胞なのかを検討する。またTax/MHCテトラマーを用いて、中枢神経におけるHTLV-1特異的CTLを同定する。以上によりヒトのHAMとの相同性を組織病理学的に確認する。 次に中枢神経系に浸潤しているHTLV-1感染CD4細胞およびHTLV-1特異的CTLのケモカインならびに接着因子の解析、ならびに細胞浸潤が起こっている部位の血管内皮細胞の接着因子を免疫組織学的に検討し、どの様な分子が細胞浸潤に関与しているのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は培養細胞が目的の細胞数にいたらず、動物実験を行うことができなかった。そのため当初予定していたマウスの購入は行わず、予定より使用した費用が少なかったため、次年度使用額が発生した。 平成25年度は、細胞株培養およびマウス購入代金が主要な用途となる予定である。また、動物モデル作成後の詳細な解析のために、各種抗体、MHCテトラマー、組織切片作成費等に使用予定である。
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