HAMの脊髄ではHTLV-1感染CD4陽性細胞とHTLV-1特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が浸潤し、脊髄内でHTLV-1特異的炎症を起こしHAMが発症していると考えられている。HTLV-1感染CD4陽性細胞とHTLV-1特異的CTLをマウスに移入することでHAM動物モデルを作成し、新規治療法開発のツールとすることが本研究課題であり、本年度は以下の研究を行った。 HLA-A2またはHLA-A24陽性のHAM患者の末梢血リンパ球を用いて、HTLV-1感染CD4陽性細胞株およびHTLV-1 Tax特異的CD8陽性CTL株の樹立を試みた。末梢血リンパ球よりCD4陽性細胞をマグネットビーズを用いて分離し、IL-2存在下で長期培養した。5株のHTLV-1感染CD4陽性細胞株がえられた。 HTLV-1特異的CTL株については、同一患者の末梢血リンパ球よりCD8陽性細胞をマグネットビーズで分離した。CTLの誘導に抗原提示細胞が大量に必要なため、HLA-A2+A24+のHTLV-1非感染者のBリンパ球をEBVで不死化して細胞株を作成した。この細胞株はMHCおよびCD80を発現していた。放射線照射あるいはマイトマイシンC処理後の抗原提示細胞にHTLV-1 Tax11-19およびTax301-309のペプチドを添加後、上記のCD8陽性細胞とIL-2存在下で混合培養した。以下同様の刺激を繰り返し、3株のHTLV-1特異的CD8陽性CTLがえられた。 HLA-A2陽性の同一HAM患者よりえられたHTLV-1感染細胞株、HTLV-1 Tax11-19およびTax301-309特異的CTL株を用いて以下の実験を行った。高度免疫不全マウス(NOD/SCID/JAK3欠損マウス:NOJマウス)に感染細胞株を腹腔内投与した。3日後にCTLを投与し、何も投与しないマウス、Tax11-19特異的CTLを投与したマウス、およびTax301-309特異的CTLを投与したマウスの3群に分けた。現在、感染細胞とCTLを投与したマウスに下肢麻痺が現れないか経過観察中である。
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