アレキサンダー病はアストロサイト細胞質に認められるグリア線維酸性タンパク(GFAP)を主成分とする凝集体蓄積を病理学的特徴とする稀な難治性神経変性疾患で、その約97%の症例でGFAP遺伝子の変異を認める。また、モデルマウス研究ではGFAP発現量の過剰によりアレキサンダー病の表現型を示すことが報告されている。本研究では変異および野生型GFAP遺伝子を導入した細胞および動物疾患モデルを用いて、アストロサイトの機能およびグリア-ニューロン相互作用の観点からアストロサイトに作用する既存の薬剤を用いて、本病の病態解明ならびに治療法を探索することを目的とした。 本研究最終年度は、これまでのモデル細胞の問題点を修正すべく平成25年度に作成したヒトGFAP遺伝子導入アストロサイトーマを用いて、アストロサイトへの作用が報告されている既存の薬剤(抑肝散、ゾニサミド)を用いた薬物投与実験を行った。具体的には、薬物を投与した細胞系列からRNAを抽出、次世代シークエンサーを用いてRNAseq法によるトランスクリプトーム解析を行い、薬物を投与していないコントロールと比較して、誘導あるいは抑制される因子を同定している。またヒト野生型およびR239H変異GFAP遺伝子を導入したモデルマウスの海馬より、MACSテクノロジーを用いてアストロサイトを分離してRNAを抽出、マイクロアレイ解析にてin vivoでの発現解析を進めている。 いずれの解析も現在進行中であり、今後、同定された候補因子に対して、再び細胞あるいは動物(ショウジョウバエあるいはマウス)を用いた機能解析を行い、病態解明ならびに候補薬物探索を発展させることを計画している。
|