研究課題
(1)神経細胞特異的に発現するプロモーターであるThy-1プロモーターを使用し,その下流にLoxP 配列で挟んだ赤色蛍光色素であるdsRed cDNA,さらにその下流に正常型TDP-43 cDNA を挿入したトランスジェニックマウスを作製した。作成したトランスジェニックマウスを解析したところ,マウス大脳皮質の神経細胞,錐体路に赤色蛍光色素の発現が確認できた。トランスジェニックマウスはC57BL6マウスで3世代バッククロスを行い,恒久的な神経への赤色蛍光色素を確認し,トランスジェニックマウスを確立できたと考えた。理研より供与されたVAChT-Creトランスジェニックマウスを交配中である。VAChT-Creトランスジェニックマウスは,運動神経細胞特異的にCreが発現するマウスで,交配により,loxPに挟まれた配列が排除され,代わりにその下流にあるTDP-43cDNAの発現が期待される。(2)正常型TDP43(WT-TDP43), 変異型TDP43(A315T-TDP43, TDP43-C末端断片),正常型OPTN(WT-OPTN),変異型OPTN(E478G-OPTN)のcDNAを組み込んだAAV1ウィルスを作製した。ウィルスを片側腰髄の前角に注入すると2週間後から運動神経細胞にTDP43/OPTN蛋白が発現した。このTDP-43の過剰発現ではマウスの運動神経細胞死が起こり,一側下肢の麻痺が出現した。細胞死は核内に発現が認められた,正常型TDP43およびA315T-TDP43で急速に起こり,一方TDP43-C末端断片は細胞質に発現が認められ,細胞変性は緩徐に起こった。核内TDP43のリン酸化を検討後,論文化の予定である。
2: おおむね順調に進展している
トランスジェニックマウスの作成については,トランスジェニックマウスを確立し,交配実験に進行していること。ウィルス注入モデルについてはTDP43を導入したウィルスを作成し,脊髄に注入して運動神経細胞死を再現できていること。
(1)トランスジェニックマウスはLoxP-Creシステムを用いており,Creマウスと交配中で,発症を待ちながら,運動機能の測定,発症前の脊髄の組織学的検討を行う。(2)AAV1の注入による神経細胞への過剰発現モデルについては,TDP-43の分布によりマウス脊髄における運動神経細胞死の発症が異なることが分かった。核内TDP-43のリン酸化を検討後,論文化の予定である。
H24年度に海外学会の旅費を申請しなかったこと,備品を他の研究者から借用することで購入していないため。マウスの頭数が多くなり,飼育費が当初の予定よりかさんでいること,脊髄での神経変性死の解析にマイクロアレイなど業者への外注検査を予定している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Neural Transmission
巻: 120 ページ: 1689-1698
10.1007/s00702-013-1039-4