研究課題/領域番号 |
24591276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 慎一 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20236285)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | astroglia / Keap1/Nrf2 / PPP / ER stress / glycolysis |
研究概要 |
高血糖状態における酸化ストレスの増強に対して、脳の内因性保護機能をもたらすペントースリン酸経路(pentose-phosphate pathway, PPP)活性制御には2つの主要なメカニズムが作動することを示した。すなわち、急性のグルコース濃度変化に対するallosteric regulationと亜急性~慢性のグルコース濃度変化に対するphase 2 detoxifying enzymesのマスターレギュレーターであるKeap1/Nrf2システムによる制御である。後者については、通常は細胞質内で速やかに分解される転写因子Nrf2とKeap1複合体が解離しNrf2が核移行することで酵素合成が誘導される。核移行促進因子の1つにNrf2リン酸化が想定され、Nrf2自身が小胞体(endoplasmic reticulum, ER)ストレス下のトランスデューサーであるリン酸化酵素PERKの基質であることが報告されている。高グルコース環境は培養アストログリアにおいて、解糖系のminor pathwayの1つヘキソサミン生合成経路(hexosamine biosynthesis pathway, HBP)亢進に伴ってERストレスを惹起し、さらにKeap1/Nrf2システムを介して別のminor pathwayであるPPPの律速酵素glucose 6-phophate dehydrogenaseを誘導する可能性がある。総じてアストログリアのグルコース代謝応答による神経保護作用が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高血糖環境におけるアストロサイトの反応について、仮説にしたがってペントースリン酸経路(PPP)の活性化が示され、その保護作用が確認された。この基盤となる2つの制御メカニズムが明らかにされた。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病における炎症の関与が注目されている。炎症性細胞障害において、内因性リガンドが神経系細胞に発現するtoll-like receptors(TLRs)に作動し、種々のpro-inflammatory responseを惹起することが知られており、TLR4のノックアウトマウスでは炎症性の中枢神経疾患の一つと考えられる虚血性神経障害において、梗塞巣が縮小することが報告されている。TLR4はニューロンのみならず、グリア系細胞にも発現が確認されており、特にmicrogliaにおいては、TLR4刺激がニューロンに傷害作用をもたらすことが知られている。しかし、同じグリア系細胞であるastrogliaにおけるTLR4の作用は十分に検討されていない。今後はアストロサイトと炎症反応という視点で糖尿病性神経障害を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養アストログリアおよびニューロンにおける高グルコース環境とTLR4の関連を明らかにする。まず内因性TLR4リガンドであるlipopolysaccharide(LPS)が各々のPPP活性を変化させるか否かを検討する。次にLPSによるPPP活性化が、Keap1/Nrf2システムを介したものであるか否かをNrf2ノックアウトマウスから調整した培養細胞を用いて検討する。最後にTLR4への内因性リガンド刺激がNrf2のリン酸化を惹起するメカニズムを検討する。想定いているのはTLR4→MAPKのシグナル系であり、薬理学的に阻害薬を組み合わせて、WBによるNrf2のリン酸化を検討していく。
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