研究課題/領域番号 |
24591276
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 慎一 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20236285)
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キーワード | astroglia / Keap1/Nrf2 / PPP / LPS / TLR4 |
研究概要 |
糖尿病における炎症反応の関与が注目されている。虚血性神経細胞障害において、内因性LPSリガンドが神経系細胞に発現するTLRsに作動し、種々のpro-inflammatory responseを惹起することが知られており、TLR4のノックアウトマウスでは梗塞巣が縮小することが報告されている。TLR4はニューロンのみならず、グリア系細胞にも発現が確認されており、特にmicrogliaにおいては、TLR4刺激がニューロンに傷害作用をもたらすことが知られている。しかし、同じグリア系細胞であるastrogliaにおけるTLR4の作用は十分に検討されていない。また糖尿病における臓器障害におけるTLR4の関与、特に脳における作用はほとんど検討されていない。今回、培養astrogliaにLPSを添加したところ、PPP活性化が生じることが明らかとなった。PPP活性制御にはphase 2 detoxifying/antioxidant enzymesのマスターレギュレーターであるKeap1/Nrf2システムが関与し、Nrf2が核移行することで酵素合成が誘導される。核移行促進因子の1つにNrf2リン酸化が想定され、Nrf2はMAPKのリン酸化基質であることが知られている。LSP刺激がMAPKを介してPPPを活性化することは、astrogliaのTLR4刺激を介した炎症性神経細胞障害に対する保護機構と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度における計画通りに、TLRを介したastrogliaの脳保護機構を予測し、TLR4リガンドであるLPSに対する培養astrogliaの反応を、PPP活性化およびその制御機構としてのKeap1/Nrf2システムの活性化として具体的に示すことができた。、また両者をつなぐシグナル経路としてMAPKによるNrf2リン酸化を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病に付随するインスリン抵抗性や、低血糖は脳に対する障害因子として作用するが、脳の有する内因性の保護物質としてケトン体(KB)の機能を検討する。肝臓で産生・供給される”外因性”KBは脳のエネルギー基質となることが古くから知られているが、今回は脳内で産生される”内因性”KBに注目し、特にastrogliaのKB産生制御メカニズムを明らかにし、astroglia由来の”内因性”KBがもたらすneuron保護作用を証明する。
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