研究課題/領域番号 |
24591279
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
朝倉 邦彦 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (50333159)
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研究分担者 |
武藤 多津郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60190857)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視神経脊髄炎 / アクアポリン4 / 治療 |
研究概要 |
H24年度は、視神経脊髄炎(NMO)における抗アクアポリン4(AQP4)抗体による病態発現の解析のため、これまでのAQP4M1またはAQP4M23の単独発現系に比べて、AQP4M1とAQP4M23の2つのisoformがを同時に発現するより生理的な発現系を作製することを一つの目標としていた。AQP4M1 cDNAの下流に蛍光色素RFPを組み込み、AQP4M23 cDNAの下流にGFPを組み込み、Gateway system (Invitrogen)を用いて、M1とM23の2つの遺伝子をそれぞれ別のプロモーターを上流につけて1つの発現ベクター(destination vector)に挿入した。このベクターをリポフェクション法により、AQP4を発現しないBHK-21細胞株などにトランスフェクションし、それぞれのAQP4M1分子とM23分子を同時に発現させたstable transformantを抗生剤G418投与により作製の成功した。この細胞をNative gel electrophoresisと抗AQP4抗体によるウエスタンブロットで解析すると、4量体を形成していた。 この細胞株に、非働化したNMO患者血清を2%濃度で反応させたところ、一部の細胞は培養1-2時間で接着性を失い浮遊した。M1/RFPまたはM23/GFPを単独発現した細胞も作製し、非働化したNMO患者血清を2%濃度で加えたが、形態変化は認められなかった。NMO患者血清で処理した細胞をtrypan blueで染色したところ、M1とM23の発現系でも細胞死は認められなかった。このことから、NMO患者では、血液脳関門を通過した抗体が、直接的にアストロサイト足突起を障害している可能性が示唆されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、視神経脊髄炎(NMO)における抗アクアポリン4(AQP4)抗体による病態発現の解析のため、これまでのAQP4M1またはAQP4M23の単独発現系に比べて、AQP4M1とAQP4M23の2つのisoformを同時に発現するより生理的な発現系を作製することを一つの目標としていたが、予定通り2つの分子を同時に発現する細胞株の作製に成功した。また、この細胞株ではNMO患者血清添加により、形態変化も観察された。これらの結果については、現在論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイト障害を抑制してNMOを治療する目的で、今回作製した細胞株でのAQP4分子の局在をlipid raftに注目して解析する。これまでの実験からAQP4M1がlipid raftに存在することがわかっており、AQP4のisoformに着目してその局在を解析する。また、NMO患者血清を加えた際に起こる反応を、リン酸化シグナル伝達に着目して、シグナルの解析を行う。さらに、Sphingosine-1-phosphate(S1P)は、免疫系などにおいて重要な調節因子として作用しており、Sphingosine kinase 1 (SphK1)により合成され、SphK1は、lipid raftに存在すると考えられている。多発性硬化症の治療に用いられるFingolimod (FTY720)は、S1P1受容体アゴニストとして作用し、血液脳関門を通過し中枢で直接アストロサイトに作用していることが最近示されており、アストロサイトはS1P受容体とSphK1を発現している。したがって、AQP4やSphK1が存在するlipid raftを阻害する、高脂血症治療薬statinやfilipinを用いることにより、アストロサイト障害抑制の可能性の有無について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
作製したAQP4発現細胞株におけるNMO患者血清のシグナル伝達解析のため、各種リン酸化シグナルに対する抗体やウエスタンブロット解析に研究費を使用する。また、lipid raftを阻害する薬剤statinやfilipinを用いて、AQP4発現細胞株に対するNMO患者血清の細胞障害抑制の検討に研究費を使用する。
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