研究課題/領域番号 |
24591281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
砂田 芳秀 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00240713)
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研究分担者 |
村上 龍文 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30330591)
大澤 裕 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80246511)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / 再生医療 / シグナル伝達 / 国際情報交換 |
研究概要 |
カベオリン-3欠損マウスとnNOS欠損マウスを交配し、F2世代のマウスで、野生型(CAV3P104L-/-/nNOS+/+)、カベオリン-3欠損 (CAV3P104L+/+/nNOS+/+)、カベオリン-3/nNOS二重欠損(CAV3P104L+/+/nNOS-/-)、nNOS欠損(CAV3P104L-/-/nNOS-/-)の4種類遺伝子型のマウスを得ることに成功した。これらのマウスを繁殖させ統計学的解析によって、カベオリン-3欠損常染色体優性肢帯型筋ジストロフィー(LGMD1C)においてnNOSが、カベオリン3欠損から発する筋萎縮シグナルに促進的に働くのか、抑制的に働くのかについて検討している。また、カベオリン-3欠損、nNOS欠損マウスのそれぞれの座骨神経を切除して、野生型コントロールマウスと比較した。CTによる下腿筋断面積、下腿筋重量、及び単一筋線維断面積は、いずれもコントロールと比較して有意に減少することが明らかとなった。この結果は、カベオリン3は筋萎縮シグナルを抑制するという以前の報告(Ohsawa Y, et al. JCI 116, 2006)とは一貫するが、nNOSが除神経後筋萎縮を抑制するという報告(Suzuki N, et al. JCI117, 2007)とは正反対の結果であった。すなわち、nNOSも、カベオリン3と同様に脱神経筋萎縮シグナルを抑制するという新しい知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、独自作出したカベオリン-3欠損マウス(CAV3P104L Tg:CAV3P104L+/+)と米国ジャクソンラボから購入したnNOS欠損マウス (nNOS exon 1欠損:nNOS-/-)を交配した。F2世代マウスについて、遺伝子型をゲノムPCR法により決定した。これまでに、野生型(CAV3P104L-/-/nNOS+/+)、カベオリン-3欠損(CAV3P104L+/+/nNOS+/+)、カベオリン-3/nNOS二重欠損(CAV3P104L+/+/nNOS-/-)、 nNOS欠損(CAV3P104L-/-/nNOS-/-)の4種類のマウスを作出することに成功した。現在、各遺伝子型のマウスを繁殖させ、体重・握力・血清CK値について経時的に統計学的解析を開始した。 また、カベオリン-3欠損、nNOS欠損マウスの一側座骨神経を切除し、1週間後に小動物CT(Latheta)で骨格筋断面積(下腿中央)、2週間後に前脛骨筋とヒラメ筋の筋重量・単一筋線維断面積を測定した。カベオリン-3欠損マウスは野生型コントロールと比較して除神経後の骨格筋断面積、筋重量、単一筋線維断面積は有意に減少していた。すなわち、カベオリン3は脱神経筋萎縮シグナルを抑制し、われわれの以前の報告(Ohsawa Y, et al. JCI 116, 2006)と一貫していた。同様にnNOS欠損マウスもコントロールと比較して座骨神経除神経後の筋萎縮が促進していた。この結果は、nNOS欠損マウスで除神経後筋萎縮が抑制されるという以前の報告(Suzuki N, et al. JCI117, 2007)とは正反対で、nNOSも筋萎縮シグナルを抑制するという新たな可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
各遺伝子型のマウスについて大規模な繁殖をおこない、可能な限り一期的に骨格筋の生理学的・組織学的解析を進行させて、nNOSが、カベオリン3欠損筋ジストロフィーにおける筋萎縮シグナルに促進的に働くか、抑制的に働くかについて解析する。 本年度明らかとなったカベオリン3及びnNOS欠損マウスにおける除神経後筋萎縮促進という新たな治験については、まずカベオリン3及びnNOSの干渉RNA(Origene社)を独自に開発したアテロコラーゲンデリバリーシステム(Kinouchi, et al. Gene Ther 15, 1126-1130, 2008)を用いてコントロールマウスの前脛骨筋へ導入して、同様に筋萎縮が促進されるかについて再現性を検討する。さらに、われわれが条件設定を終えている電気穿孔法(Murakami, et al.Muscle Nerve 27, 237-241, 2003)を用いて、蛍光標識したカベオリン3及びnNOS 発現プラスミド(pCAGGS-nNOS-IRES-Cherry)導入後に座骨神経切除を行い、筋萎縮が抑制されるか否かについても検討をおこなう。さらに本年度に着手できなかった、ステロイド投与による筋萎縮についてもカベオリン3及びnNOS欠損マウスで検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は、主として交配した各遺伝子型のマウス骨格筋の統計学的解析のために使用される。骨格筋の免疫組織学染色・ウエスタンブロットに必要な各種抗体、蛍光退色防止剤、スライドガラス等の蛋白質組織生化学試薬、ノザンブロットやqPCRによる骨格筋遺伝子発現解析のための分子生物学試薬が中心となる。一方、除神経後筋萎縮実験で前投与するカベオリン3及びnNOSの干渉RNAも、分子生物学試薬として一括し計上した。アテロコラーゲンデリバリーシステムについては、現在、有効性を確認しているコーケン社の試薬を用いるが、高価なため、別個記載とした。
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