研究実績の概要 |
ギラン・バレー症候群(GBS)およびFisher 症候群(FS)の抗ガングリオシド抗体についてIgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像の相関について継続して検討した。IgG1+IgG3群はより若年で抗体活性が高く,補体活性化能の高さと相関した。次に,GBSにおいて予後,死亡率と関連が深い自律神経障害に関して臨床的,免疫学的に後方視的に検討した。自律神経症状をもつGBS49例(男31、女18例)の解析で,自律神経障害をきたすGBSは球麻痺・外眼筋麻痺の合併が高頻度であり,重症度が高く人工呼吸器装着例が多く,GBSの予後関連因子として自律神経障害の重要性が示唆された。自律神経障害では血圧変動(61%)・膀胱直腸障害(51%)がもっとも多く,抗ガングリオシド抗体の解析ではGQ1b、GT1aに対する抗体、これらを含むガングリオシド複合体に対する抗体が10~20%にみられた。運動軸索型GBSに関連する抗体(GM1, GD1a, GalNAc-GD1a)をもつ例は有意に少なく,脱髄型GBSで生じやすいと考えられた。抗GQ1b抗体がGBSの一部で自律神経障害に関連する可能性が示唆された。次に,GBS,FSに加えて慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)において抗ガングリオシド抗体に加えて絞輪部神経蛋白,neurofascin (NF) 155に対する自己抗体を測定し,その臨床的意義,IgGサブクラスを検討した。GBS,FSでみられる抗NF155抗体のIgGサブクラスはIgG2であったが,CIDPでは約10%にIgG4サブクラスの同抗体が陽性であり,若年発症,振戦,髄液蛋白の著明な高値が特徴であった。抗糖脂質抗体は抗NF155抗体陰性例では一部で陽性となったが,抗NF155抗体陰性例ではみられずIgG4抗NF155抗体陽性CIDPは一つの亜型を形成すると考えられた。
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