研究概要 |
視神経脊髄炎(NMO)は視神経と脊髄が冒される中枢神経疾患である。NMO患者特異的な血中自己抗体抗アクアポリン4(抗AQP4抗体)が発見され、病態形成に重要な役割を果たしていると考えられている。我々は最近、NMOにおいてB細胞亜分画プラズマブラスト(Plasmablast, PB)が増加し、末梢血中の主要な抗AQP4抗体産生細胞であることを報告した。NMOでは、多くの患者において抗AQP4抗体が陽性であるが、抗AQP4抗体陰性の一群の患者(seronegative NMO, SNNMO)が存在する。SNNMOには特異的なバイオマーカーが存在しないため、その診断は臨床診断のみに頼らざるを得ない。本研究においては、SNNMO病態におけるB細胞および液性免疫の関与を明らかにし、SNNMO血中自己抗体およびその標的分子の同定と特異的治療法の検討を行うことを目的とする。その第一段階として、SNNMO患者末梢血PBの割合を解析した。また、SNNMO患者血清のヒトアストロサイトに対する細胞障害活性の検討を行った。その結果、抗AQP4抗体陽性患者のみならず、抗AQP4抗体陰性NMO患者においてもRRMS患者や健常人と比較して末梢血中のPBの割合が増加していた(p<0.05)。SNNMO患者におけるPBの増加は抗AQP4抗体に依らない病態分類の指標となりうる。SNNMOにおいてもPBが何らかの自己抗体を産生し、病態形成に関与している可能性が示唆される。また、NMOにおいては、患者血清が正常ヒトアストロサイト(NHA)に対して、細胞障害活性を有することが報告されている。現在は予備実験の段階であるが、私はSNNMO血清のNHAに対する細胞障害活性測定系の予備実験を行っており、SNNMO血清の細胞障害活性を、多数の患者血清で測定することが今後の課題である。
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