研究課題/領域番号 |
24591286
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
藤掛 伸宏 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 疾病研究第四部, 科研費研究員 (60467595)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経分子病態学 / 遺伝学 / 神経科学 / 筋萎縮性側索硬化症 / 遺伝子 / TDP-43 / 神経変性疾患 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子が多数同定され、ALS の病態は多岐にわたることが明らかとなった。このことから ALS の病態解明・治療法開発には、ALS 原因遺伝子群の相互関係すなわち ALS 原因遺伝子群ネットワークを解明することが必要であると考えられる。本研究では、様々な ALS 原因遺伝子を発現し神経変性・神経症状を再現するモデルショウジョウバエを多系統樹立し、遺伝学的な解析により in vivo での ALS 原因遺伝子群ネットワークを解明する。 1) ALSモデルショウジョウバエの樹立:今年度は、ALS原因遺伝子であるVCPおよび最近発見されたGGGGCCリピート配列の異常伸長RNAを発現するトランスジェニックショウジョウバエの樹立を行った。その結果、野生型および変異型ヒトVCPの複眼における発現では明らかな異常を認めなかった。異常伸長GGGGCCリピートRNAの発現では、細胞の脱落による重度な複眼変性を生じることが明らかとなった。一方で野生型GGGGCCリピートの発現ではこれらの症状は生じ見られなかった。2) ALS 原因遺伝子群ネットワーク解析:TDP-43が惹き起す神経変性に対する他の家族性ALS原因遺伝子の過剰発現(FUS)および機能喪失(VCP, UBQN, DCTN1)の影響を調べた。その結果、FUSの過剰発現およびUBQNおよびDCTN1の機能喪失によりTDP-43が惹き起す神経変性が増悪することが明らかとなった。VCPの機能喪失ではTDP-43神経変性に明らかな影響は認めなかった。本研究からTDP-43が引き起こす神経変性にはFUS、UBQN, DCTN1が関与している可能性が示唆された。今後、これらの遺伝子の分子レベルでの相互作用を検討することでALS発症の分子メカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成24年度の目標は様々な遺伝子に着目したALSモデルショウジョウバエの作製であり、実際にDCTN1やVCPなどの遺伝子発現トランスジェニックショウジョウバエの作製を終了している。またこれらの遺伝子を含めたALS原因遺伝子に対するRNAiを発現するトランスジェニックショウジョウバエを入手し、TDP-43を中心としたALS 原因遺伝子群ネットワーク解析を開始している。以上のことから、全体的に当初の研究計画がおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
異常伸長GGGGCCリピートRNA を発現するALSモデルショウジョウバエについては、さらに神経症状を解析するとともに、in situハイブリダイゼーションおよび神経組織の免疫染色にて、神経細胞内のRNA蓄積およびRNA結合蛋白質などの異常蓄積を評価する。またALS原因遺伝子を発現するトランスジェニックショウジョウバエの作製および解析を引き続き行う。一方で、これらの遺伝子に対するRNAiを発現するトランスジェニックショウジョウバエを購入し、ALS 原因遺伝子群ネットワーク解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニックショウジョウバエの作製および購入。 免疫染色に必要な抗体の購入および作製、in situハイブリダイゼーションに使用するプローブの購入。 ショウジョウバエの飼育/維持費。 維持するショウジョウバエが増えたら必要に応じてインキュベーターを購入。
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