研究課題/領域番号 |
24591286
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
藤掛 伸宏 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第四部, 科研費研究員 (60467595)
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キーワード | 神経分子病態学 / 遺伝学 / 神経科学 / 筋萎縮性側索硬化症 / 遺伝子 / TDP-43 / 神経変性疾患 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子が多数同定され、これらの遺伝子の機能は多岐にわたることが明らかとなった。このことから、ALS 原因遺伝子群の相互関係を解明しこれらに共通する病態を明らかにすることで、ALS の治療標的を見出すことができると考えられた。1) ALSモデルショウジョウバエの樹立:今年度は、ALS原因遺伝子であるDCTN1を発現するトランスジェニックショウジョウバエの樹立を行った。その結果、野生型および変異型ヒトDCTN1の複眼における発現では、野生型、変異型ともに複眼変性を惹き起こした。2) ALS 原因遺伝子群ネットワーク解析:昨年度までに私は、ALSの原因遺伝子FUSの過剰発現、およびUBQN、DCTN1の機能喪失によりTDP-43が惹き起こす神経変性が増悪されることを明らかにした。今年度は、これらの遺伝子のうち微小管依存的輸送に関わるDCTN1に着目し、DCTN1の機能喪失がTDP-43の毒性を増悪するメカニズムの解明を目指し研究を行った。TDP-43発現培養細胞および初代神経細胞についてタイムラプスイメージング解析した結果、DCTN1のノックダウンによりTDP-43の細胞質内輸送が遅延することが明らかとなり、このことからTDP-43はDCTN1依存的に細胞質内を輸送されていることが示唆された。本研究からALSではDCTN1の機能障害によりTDP-43の凝集体形成が促進され、神経変性が惹き起こされる可能性が示唆された。今後、DCTN1機能低下による毒性増悪の分子メカニズムをさらに詳細に解析するとともに、DCTN1がALSの治療標的となる可能性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、平成25年度の目標は様々なALS原因遺伝子の過剰発現、あるいはそれらに対するRNAiを発現するトランスジェニックショウジョウバエを用いた遺伝子間相互作用解析であり、実際にTDP-43を中心としたALS 原因遺伝子群ネットワーク解析を行っている。さらにTDP-43とDCTN1については遺伝学的相互作用に加えて、分子間相互作用も明らかにしている。このことから、当初の研究計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ALS原因遺伝子を発現するトランスジェニックショウジョウバエの作製・樹立およびALS 原因遺伝子群ネットワーク解析を引き続き行う。またALS 原因遺伝子群ネットワーク解析から明らかとなったTDP-43とDCTN1の関係についてさらに詳細な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は遺伝子組換えショウジョウバエの作製や購入を一括して行い3年間系統を維持する予定であったが、飼育・維持の労力を減らす目的で作製・購入を適宜しているために、残りの系統の作製・購入・維持に必要な研究費を今年度に繰り越すこととなった。また当初予定していた研究発表のための経費が必要と無くなったため、今年度に繰り越した。 当初の研究使用計画に加えて、本研究から明らかとなった治療標的候補分子に対する薬剤の治療効果を検討するため、複数の薬剤についてin vivoへの投与に必要な量の購入が必要となる(10万円程度)。また、ショウジョウバエ飼育用インキュベーターの増設が必要となる(60万円程度)。そして論文投稿(掲載)料として10-20万円程度が必要となる。
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