研究課題/領域番号 |
24591287
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
ポピエル ヘレナ・明子 東京医科大学, 医学部, 助教 (40467593)
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キーワード | 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / 治療薬開発 / オリゴマー |
研究概要 |
近年、アルツハイマー病やポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患において、異常蛋白質の毒性オリゴマーが神経変性を引き起こすと考えられるようになった。本研究では、申請者が独自のPolyQ蛋白質オリゴマーアッセイを用いて同定した異常伸長PolyQ蛋白質オリゴマー阻害化合物の中で、既にショウジョウバエモデルに対する治療効果を確認している9化合物について、1)マウスにおける薬物動態を解析し、2)PolyQ病モデルマウスの神経症状に対する治療効果を明らかにし、さらに3)PolyQ病モデルマウスにおける異常伸長PolyQ蛋白質の蓄積に対する治療効果を確認し、PolyQ病に対する分子標的治療薬の開発を行う。 今年度は、上記9化合物の中でも血液脳関門透過性が高く、ヒトへの安全性も確認されている一化合物、QAI1に対するさらなる解析を行った。QAI1の、SCA1以外のPolyQ病モデルに対する治療効果、さらにはPolyQ病以外の神経変性疾患に対する治療効果の検討を行った。QAI1をPolyQ病モデルマウスの一種であるSBMAのモデルマウスに経口投与し、神経症状を解析したところ、自発運動量の改善が確認され、QAI1の複数のPolyQ病モデルマウスに対する治療効果が証明された。さらにQAI1のアルツハイマー病およびパーキンソン病に対する効果を検討した。In vitroの系では、A-betaの凝集はQAI1によりやや遅延されたが、a-synucleinの凝集に対するQAI1の影響は確認されなかった。これらの疾患モデルショウジョウバエにQAI1を投与したところ、神経変性に対する効果は確認されなかった。そしてPolyQ病の中でも世界的に最も高頻度であるSCA3のモデルマウスに対するQAI1の治療効果を検討すべく、ノックインマウスを作製し、現在実験に向けて匹数を増やしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、残りの候補化合物の解析はしていないものの、最も血液脳関門透過性が高く、ヒトへの安全性も確認されているため一番臨床応用に近いと考えられるQAI1に焦点をあて、QAI1がSCA1マウスのみならず、SBMAマウスに対しても治療効果を発揮することを確認した。複数モデルで治療効果を確認できた事は、臨床応用に向けての価値が高い。さらに世界的に最も患者数の多いPolyQ病であるSCA3のモデルマウスもラインを確立しているため、近日中にこれに対するQAI1の治療効果も確認できる見込みである。 さらにはQAI1がPolyQ病のみならず、アルツハイマー病やパーキンソン病など、他の神経変性疾患にも応用できる可能性の検討も進められたため、本計画は計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずSCA3マウスの数を増やし、このモデルに対する治療効果を検討する。具体的には、SCA3マウスにQAI1を経口投与し、ロータロッドテストや自発運動解析などによる神経症状に対する効果の検討、さらに脳切片を作製し、免疫染色による組織学的変化に対する効果を検討する。 さらにQAI1の他の神経変性疾患に対する治療効果のさらなる検討のため、アルツハイマー病のモデルマウスにQAI1を経口投与し、脳切片の免疫染色による組織学的変化に対する効果の検討、および脳ライセートのELISAなどによる生化学的変化の解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたA-betaおよびa-synucleinペプチドを用いたin vitroの実験が計画よりも早く終了したため、購入したペプチド量が予定より少なかった。さらに検討を9化合物中QAI1に絞ったため、他の8化合物を購入しなかった。 検討を続けるQAI1を購入する。さらにQAI1の効果を検討するSCA3のモデルマウスやアルツハイマー病のモデルマウスの購入や、維持に必要な野生型マウスを購入する。さらにこれらのマウスの組織学的解析や生化学的解析に必要な抗体やキットなどを購入する。
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