研究課題
基盤研究(C)
筋炎はheterogeneousな疾患である。本年度は、自己抗体と筋炎の臨床病理像との対応を明らかにするために、抗ミトコンリア抗体(AMA)陽性の筋炎の特徴に関して検討した。212例の血清が利用可能である筋炎バンク症例を用い、24例のAMA陽性例と188例のAMA陰性例について,後方視的に臨床像,病理組織像を比較した.212例中の24例(11.3%)でAMAが陽性であり, 7例はPBC合併,17例はPBC非合併であった.24例中13例において12ヶ月以上の慢性経過をとり, 6例は筋力低下の自覚がなかったが13例全例において受診時に筋萎縮を認めていた.合併症は,8例で不整脈・心伝導障害,心拍出量の低下などの心臓合併症を認め,2例でカテーテル・アブレーション治療をうけていた.6例で肺活量の低下を認め, 2名で人工呼吸器を必要としていた.筋病理所見では,炎症細胞浸潤に加え13例では慢性の筋原性変化を認め, 6例において肉芽腫性の変化を認めた.統計解析では,AMA陽性筋炎は陰性筋炎に比較して,臨床像の慢性経過,心臓合併症,筋萎縮,筋病理像の慢性筋原性変化,肉芽腫像の項目において高頻度であった.AMA陽性筋炎のうちPBC合併群と非合併群の比較では,心合併症はPBC合併群により高頻度であったが,それ以外の項目では差はなかった.治療経過が追えた15例中,治療された12例では,少量副腎皮質ステロイドで治療された1例を除き全例で3ヶ月以内にCKは正常化し,6例で筋力は改善,残りの症例では期間中の改善は認めていなかった.3例の無治療例では2例で新たに不整脈を発症しており1例でペースメーカーが装着されていた.抗ミトコンドリア抗体は筋炎のうち慢性経過、筋萎縮、心筋障害、肉芽腫性炎症を特徴とするサブグループのマーカーとなることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
筋炎の多様性を病理、血清自己抗体、臨床の観点から網羅的に解析することを目的としている。今回、抗ミトコンドリア抗体を伴う筋炎が、筋炎の中でも慢性経過、筋萎縮、心筋障害、肉芽腫性炎症を特徴とする特異なグループであることを明らかにし論文発表した(Brain:2012;1767-1777)。筋炎と心筋障害、呼吸筋障害の合併が、単に炎症の波及がばかりでなく機能抗体を介すると考えられ、筋炎の概念を新たにする発見である可能性がある。
筋炎の多様性を病理、血清自己抗体、臨床の観点から網羅的に解析することを目的としている。1)今回の検討症例と、さらに検討症例をふやしつつ、抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎がどのような機序で心筋障害、呼吸筋障害をおこしているのか、液性因子、臨床例の予後解析を加えていく。2)筋炎サブグループごとの解析ターゲットとして、今後、悪性腫瘍合併筋炎を検討していく。バンク症例をもちい、後方視的に臨床経過調査をおこない、悪性腫瘍合併の有無を確認。疫学検討を行う一方、臨床像、自己抗体、病理像の関係を網羅的に解析していく。特にTif-1γ抗体陽性例の病理像に関して検討することで、悪性腫瘍合併筋炎の発症機序を明らかにすることを視野にいれたい。一方、継続的に年間、約100例の筋炎症例を診断しており、今後も遺伝子検討の同意を得つつ、バンク症例の充実をはかっていく。
抗Tif-1γ抗体を含む筋炎特異自己抗体の測定の試薬購入、抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎患者の血清中の機能抗体解明のための検討試薬病理組織解析用の試薬(酵素・免疫染色用の試薬、電顕試薬)臨床調査のための通信費
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