研究課題/領域番号 |
24591290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小澤 鉄太郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10377153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シヌクレイノパチー / グレリン / 消化器症状 / 消化管神経叢 / パーキンソン病 / 多系統萎縮症 |
研究概要 |
目的:シヌクレイノパチーにおける消化器症状とグレリン分泌異常との関連を検討する。方法:多系統萎縮症 (MSA)30例、疾患コントロールとして進行性核上性麻痺(PSP)/大脳皮質基底核変性症(CBD)24例、正常コントロール24例における消化器症状の定量的評価と血漿グレリン定量を行った。血漿アクティブグレリンとデスアシルグレリンは、早朝空腹時の血漿を用いてELISAにて定量し、アクティブグレリン/総グレリン比を評価した。自覚的な消化器症状の程度は、7項目の症状を点数化するSCOPA-AUT消化器領域の質問票を用いて評価した。結果:MSAのアクティブグレリン/総グレリン比は、PSP/CBDならびに正常コントロールに比して明らかに低下していた。MSAのSCOPA-AUT消化器領域のスコアは、PSP/CBDならびにコントロールよりも明らかに高値であり、MSAの自覚的消化器症状は他のグループより重症であった。MSAではアクティブグレリン/総グレリン比とSCOPA-AUT消化器領域のスコアとに明らかな逆相関が見られ、アクティブグレリン/総グレリン比が低いほど消化器症状が重症である傾向が見られたが、他のグループではそのような相関関係は見られなかった.結論:MSAの消化器症状にはアクティブグレリン/総グレリン比の低下が関与するものと考えられた。今後は、MSAのグレリン分泌異常のメカニズムに関連する自律神経系の病理変化、あるいは消化管神経叢における病理変化を明らかにする必要がある。現在、MSAの消化管神経叢における神経細胞萎縮を証明するため、画像解析ソフトを用いた神経細胞計測のための予備実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シヌクレイノパチーにおける消化器症状の病態に、グレリン分泌異常が関与することを明らかにし、この研究成果は論文にて公表予定である。また、シヌクレイノパチーの消化管病理に関する予備実験も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シヌクレイノパチーにおける消化器症状の臨床的解析としては、パーキンソン病でのSCOPA-AUT消化器領域の評価と血漿グレリン定量をさらに進める。その際、パーキンソン病患者の多くが内服している抗パーキンソン病薬のグレリン分泌に与える影響(グレリン分泌細胞を用いた実験系ではドパミンとドパミンアゴニストがグレリン分泌促進作用を示すと報告されている)を考慮する必要がある。そのため、できるだけ抗パーキンソン病薬の内服量が少ない病初期の症例をエントリーする必要がある。あるいは、一定期間抗パーキンソン病薬を休薬してグレリン定量のための採血を行う必要がある。消化管病理検索については、画像解析を用いた消化管神経叢における神経細胞計測の方法を確立し、シヌクレイノパチー症例での消化管神経細胞の萎縮性変化を証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
血漿アクティブグレリンとデスアシルグレリン定量(ELISA)、血清レプチン定量(RIA)、シヌクレイノパチー症例における消化管病理検索でのペリフェリンならびにリン酸化アルファシヌクレイン免疫染色、画像解析のためのソフトウエア、研究発表のための国内・国際学会への旅費、研究成果の国際的な発信のため英文校正、などへの使用を計画している。
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