研究概要 |
遠位部の末梢神経機能と臨床症状の客観的対比を本年度を行った。末梢神経障害の客観的評価指標として定量的感覚検査(Quantitive Sensation Testing, QST)があるものの、本邦ではほとんど用いられていないが、本研究ではQSTと神経生理機能検査の比較し検討した。 感覚障害を有するATTR Val30Met変異をもつ家族性アミロイドポリニューロパチー患者15名(51±14歳、平均±sd)。QSTをCASE IVを用いてcooling detection threshold(CDT), vibration detection threshold (VDT), visual analog scaleで5/10の痛覚を生じる温熱刺激(heat pain 5.0, HP5)を測定し、感覚神経伝導機能検査との相関を検討した。比較的症状の軽い上肢でも尺骨神経伝導機能は軽度低下していた。CDT, VDTも正常者より低下していたが(正常者の平均を50%としてCDT 67±31%, VDT 92±14%)、HP5.0は過敏から低下まで広範に分布していた(37±40%)。CDTはSCV, SNAP振幅と相関し、VDTはSCVと相関した(p<0.005)。HP5.0とこれらは相関しなかった。症状の重度な下肢では腓腹神経伝導機能はSCV, SNAP振幅ともに低下しており、QSTもいずれも低下していた(CDT 92±20%, VDT 97±6%, HP5.0 71±37%)。 CDT, VDTは比較的大径有髄線維の機能を主に反映し、温熱による痛覚は小径線維の機能を反映していると考えられるため、SCV・SNAPとCDT, VDTが相関することが予測された。しかし、障害が高度であると相関はみられないため、これらは双方を計測する必要がある。
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