研究課題/領域番号 |
24591291
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森田 洋 信州大学, 医学部附属病院, 准教授 (10262718)
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キーワード | 感覚神経活動電位 / near nerve法 / C線維 / 電流感覚域値 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、遠位部の末梢神経機能と臨床症状の客観的対比を本年度も行い、症例数を蓄積した。末梢神経障害の客観的評価指標としては定量的感覚検査(Quantitive Sensation Testing, QST)があるものの、本邦ではほとんど用いられていないため、本研究ではQSTと神経生理機能検査の比較し検討した。また、以前から行われている電流感覚域値(CPT)との関連性も比較した。対象は家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)と近位部の障害が主体である、神経痛性筋萎縮症を対象におこなった。 CPTについては主にFAP症例で検討を行った。全ての刺激周波数(5Hz, 250Hz, 2kHz)で感覚閾値は正常の上限下限を超えて大きくばらついた.感覚神経伝導速度は,全ての刺激周波数での閾値と負に相関した.しかし、刺激周波数による異なる神経線維の機能を計測できる可能性が示されていたが、実際には大径線維の指標である、伝導速度との相関のみがみられ、小径の線維の機能との相関はみられなかった。 そのため、小径線維の機能を計測する指標がより求められることから、乾らの開発した皮膚表面刺激装置を用いたC線維およびAδ線維刺激を試みる事を開始した。この機器により頭蓋表面より誘発電位が記録されていることは報告されているが、末梢の神経電位を記録した報告はない。そこで、今回は微小針電極を神経近傍に刺入することにより、神経電位を記録する方法、いわゆるnear nerve法を行った。FAPでは通常の方法で記録出来なかった32名中27名はnear nerve法で記録でき、SCVは36.0±9.2m/sであった。しかし、これはC線維ではなくAα線維の機能であるため、今回はC線維刺激のSNAP導出を行う必要がある。そのため、まず正常者でこのような導出が可能であるかの検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CASE IVおよび電流感覚域値検査を行う事による定量的感覚検査を多数例で行うとともに、詳細な感覚神経伝導機能をnear nerve法で記録する事が出来た。これにより、臨床症状と各検査パラメーターの相関を検討するためのデータの集積がほぼできた。その結果を解析中であるが、痛みなどの感覚情報と相関をみるためには従来の方法のみでは不充分であり、C線維の機能を定量評価することが必須であることが明らかとなった。 そこで、新たに開発されたC繊維の選択的刺激装置を導入し、C線維伝導機能を定量する方法を検討する方向性が確立した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、神経最遠位部の定量的評価法としてはnear nerve法が確立した方法で再現性の高いことも示すことが出来た。しかし、感覚障害の程度との比較には不充分であり、新たにC線維刺激装置を導入し、これにより感覚障害の定量的検査と神経生理機能の比較をより詳細に行っていく予定である。 また、最近位部の評価としてはF波の有効性を臨床データーと比較する中で明らかとすることが出来たが、近位部の選択的神経刺激法は未だ十分に安定しておらず、新たな刺激方法の工夫を継続して開発する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
C線維刺激装置を導入し、検索を開始する予定であったが、開発者からより精緻な刺激電極の開発中であるとの情報を得た。そのため、使用する使い捨て刺激電極は翌年度に購入することで、より精緻な実験が出来ると考え、実験の遂行順序を変更し新たな刺激電極が開発された時点で購入することにしたため、次年度使用額が生じた。 本年度購入を見送ったC線維専用刺激電極を、次年度改良品が入手可能となっており、刺激に必要な刺激電極昨年度購入予定分とあわせて本年度購入分とあわせて購入する。また、研究成果分析に必要なコンピューターシステムの更新、ソフトウェア等の購入、成果発表のための学会参加を計画している。
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