研究課題/領域番号 |
24591294
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
別宮 豪一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20626353)
|
研究分担者 |
隅 寿恵 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30403059)
望月 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90230044)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 神経筋疾患 / 神経病理 / カルシウム非依存性フォスフォリパーゼA2β / NBIA |
研究概要 |
カルシウム非依存性フォスフォリパーゼA2β(iPLA2β)をコードするPLA2G6遺伝子の変異により、中枢神経に鉄沈着を伴う神経変性疾患であるNeurodegeneration with brain iron accumulation (NBIA type2)が引き起こされることが知られている。今回、我々はiPLA2β欠損マウスの脳組織を用いて高感度鉄染色(Perls-DAB染色)を行うことにより、中枢神経における鉄沈着の分布とその経時的変化について評価した。また、比較のため同年齢の野生型マウス脳も同時に評価を行った。 野生型マウスにおいて、中脳黒質や嗅結節などの部位の主にグリア細胞の胞体内において鉄沈着が見られ、これは15週齢、1年齢、2年齢と進むにつれ増強した。運動症状発症前の15週齢のiPLA2β欠損マウスでは、中脳黒質や嗅結節などの主にグリア細胞に軽度の鉄沈着を認め、これは同年齢の野生型マウスと明らかな差は認めなかった。1年齢(発症初期)になると、上記部位に加え線条体や淡蒼球のグリア細胞内や神経線維にも鉄沈着が見られるようになり、同年齢の野生型マウスと比較して明らかにその程度は強かった。2年齢(進行期)になると、中脳黒質、嗅結節、線条体、淡蒼球に加えて大脳皮質、小脳、海馬にも著明な鉄沈着を認めた。また、これら鉄沈着が見られるのは、グリア細胞の胞体内や神経線維のみならず、神経細胞内にも認められた。 以上より、野生型マウスにおいても加齢に伴って中枢神経内の鉄沈着が増加することが分かった。さらにiPLA2βが欠損することにより、中枢神経内広範囲にわたり鉄沈着が増強することを証明した。iPLA2β欠損マウスは、中枢神経の鉄沈着に関わるメカニズムを解析するうえで有用なモデル動物と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPLA2β欠損マウス中枢神経における鉄沈着の病理学的評価は順調に進行した。そして今年度に予定していた、iPLA2β欠損マウスに対し神経毒であるMPTP (1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)を投与する実験系の構築も順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
iPLA2β欠損マウスに対し、中脳黒質のドパミン神経細胞選択的にミトコンドリアを障害する神経毒であるMPTPの慢性投与を行う。iPLA2β欠損状態にさらに負荷をかけることにより、中枢神経内の鉄沈着および鉄代謝関連因子の動態にどのような変化があるかを検討する予定である。また同時に、iPLA2β欠損マウス由来の皮膚線維芽細胞を用いた実験系の構築を行っている。この細胞を用いて、様々なストレス下における鉄代謝関連因子の動態について解析する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度同様に、マウスの購入・飼育費、免疫組織化学染色やウェスタンブロットに使用する抗体、遺伝子診断に使用する試薬、MPTP投与に必要なミニポンプや試薬が大半を占める。
|