研究課題/領域番号 |
24591295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
隅 寿恵 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30403059)
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研究分担者 |
別宮 豪一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20626353)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | PLA2G6 |
研究概要 |
PLA2G6遺伝子ノックアウトマウス(C57BL/6, 15週令n=2、55週令n=4、100週令n=6)及び同週令の正常マウスの錐体外路システム(黒質から線条体)および脊髄のパラホルムアルデヒド固定パラフィンブロックより4μmの切片を作成した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対する免疫染色を施行して各マウス群錐体街路系について比較検討した。黒質緻密部におけるTHの免疫反応性には明らかな異常を認めなかった。線条体のneuropilにおける染色パターンはコントロールではTH陽性の顆粒状から微細空胞がびまん性に観察されたが、遺伝子欠損マウスでは染色パターンが不均一となり、大型のTH強陽性の空胞が多数認められた。Periodic Acid Sciff(PAS)染色との重染色では、TH陽性構造物はPAS陽性のスフェロイドとはほとんど一致しなかった。 脊髄での病理学的解析では、遺伝子欠損マウス前角細胞から軸索に向けて多数、リン酸化αシヌクレイン陽性の小胞を認めた。これらは非リン酸化αシヌクレインに陰性で、また遺伝子欠損マウス錐体外路系には、ほとんど認められなかった。ミトコンドリア外膜マーカーであるTOM20と二重染色することにより、リン酸化αシヌクレイン陽性の小胞の一部はTOM20と共局在することが明らかとなり、変性ミトコンドリア内にリン酸化αシヌクレインが蓄積することが示唆された。 実験者を含め周囲への安全を配慮したMPTPの投与可能な環境を整え、コントロールマウスへのMPTP投与実験が開始された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLA2G6遺伝子欠損マウス錐体外路系の変性に対する病理学的解析は、計画書での予定通り、順調に進んでいる。ただ、PLA2G6遺伝子欠損マウス脊髄で認められた、リン酸化αシヌクレイン陰性・非リン酸化αシヌクレイン陽性の小胞は残念ながら錐体外路系においてはほとんど認められなかった。異常ミトコンドリアを示すと考えられるPAS陽性顆粒(Beck et. Al. 2011 J. Neurosci.)が脊髄・脳幹の運動ニューロンや後根神経節細胞などに多数認められた一方で、錐体外路系ではごく稀にしか認めなかった結果と関連するのかもしれない。錐体外路系では軸索末端における神経変性が主体である可能性が考えられたので、来年度以降、遠位軸索・シナプス部位でのマーカーに注目して解析を進めていく。αシヌクレインに関連した神経変性の解析はPLA2G6遺伝子欠損マウス脊髄を用いて同時に進めていく。 マウスへの腹腔内MPTPの投与に対する錐体外路変性の比較については、担当者の交代(安田→早川)など諸事情により遅れがある。しかしながら、人体への毒性が懸念されるMPTPの安全な投与が可能な環境を設定し、コントロールマウスへの投与は開始されている。以前の計画書ではMPTPの投与方法は腹腔内にミニポンプを留置する予定であったが、安定して体内に取り込まれる腹腔内注射へ投与方法を変更する予定である。PLA2G6遺伝子欠損マウスの週令がそろい次第、MPTPの効果を判定する実験にとりかかる。
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今後の研究の推進方策 |
PLA2G6遺伝子ノックアウトマウスの錐体外路システムにおける神経変性の機序を明らかとするために、ドパミン分泌神経細胞の遠位軸索・軸索終末にて重要な機能を果たすと考えられる分子に対する抗体を用いて免疫組織学的につ解析する。シナプス部位の小胞膜上にあって、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)により合成されたドパミンを小胞の中へ充填し開口放出に備える小胞性モノアミン輸送体2 (vesicular monoamine transporter 2, VMAT2)及び、シナプス間隙へ分泌されたドパミンを前シナプス内に回収して再利用に備えるドパミントランスポーター (dopamine transporter, DAT)の分布変化をTHやPAS染色、軸索マーカーなどと比較し、それらの発現の経時的変化を解析する PLA2G6遺伝子ノックアウトマウスの脊髄については、リン酸化シヌクレインがミトコンドリア内に蓄積する病理学的意義を明らかとする。まずは、ミトコドリア関連分子であるCCO、Tom20、ミトコドリア機能不全を示唆する4-HNEの発現との関係を調べ、あるいはPeriodic Acid Sshiff染色と重染色することにより、ミトコンドリアの変性あるいは軸索変性とリン酸化シヌクレインの蓄積の関係を調べる。 PLA2G6遺伝子ノックアウトマウス及びコントロールマウスに対して腹腔内にMPTPを投与し(早川・別宮担当)、臨床病理学的に比較する。具体的には下肢の動き・歩行パターンなど行動変化について、また黒質神経細胞死について神経細胞数の定性・定量的評価をして比較する。MPTPによりミトコンドリアが選択的に障害されることが知られるので、ミトコドリア関連分子であるCCO、Tom20、ミトコドリア機能不全を示唆する4-HNEに対する免疫組織学的染色を行い比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子診断目的の試薬、MPTP塩酸塩、各種抗体類など研究に関するもの以外に、論文投稿用に英文校正委託費用などに用いる。
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