研究課題/領域番号 |
24591299
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重藤 寛史 九州大学, 大学病院, 講師 (50335965)
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キーワード | てんかん / 皮質異形成 / 炎症 / ネットワーク |
研究概要 |
前回の結果で報告したように,このラットでは生後6週あたりから発作が出現し始め,脳波では海馬からてんかん性放電が始まっていた.また,NeuN染色を用いて皮質異形成の分布を調べたが,海馬には大きな変化は無く,異形成は皮質に存在することが確認できた.すなわち,形態学的には海馬に損傷や異形成の存在が無いにも関わらず,脳波および症候上,海馬由来のてんかん発作を認めるという結果を得られた.遺伝子操作や発作誘発刺激などの操作を加えることなく,約7割のラットに自発発作が生じており,脳波所見,発作症状とも成人発症のヒト内側側頭葉てんかんに類似していた.これらの結果は昨年,国際一流雑誌に採択された. 今年度は,このラットの自発発作出現に炎症やネットワークの変化が関与していないかを検証するために,皮質異形成を有するラットを昨年度同様に作成し.生後2週目,3週目,5週目,10週目に潅流固定を行い脳組織標本を作製した.また,冷却損傷を加えないシャム手術ラットにおいても同様に脳組織標本を作製した.各脳組織標本に対して,炎症経路で重要な役割を果たすTLR4の免疫染色を行い,さらにdensitometryによる半定量的解析にて皮質異形成ラットモデルとシャム手術ラットの海馬でのTLR4の発現を比較した.その結果,TLR4免疫染色でのdensitometryによる半定量的解析では,シャム手術ラットと比較して皮質異形成モデルラットの海馬にてTLR4の染色強度の有意な上昇が生後2週目,3週目,5週目,10週目でみられた.この結果から,皮質異形成モデルラットの海馬自発てんかん発作の発症の機序として,海馬において早期よりみられるTLR4の上昇が関与する慢性炎症化の進行が背景にあることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したように,てんかん原性の獲得と伴に,炎症性マーカーの上昇が海馬において確認され,これは神経学会総会はじめ,学会・研究会において報告した.
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今後の研究の推進方策 |
HMGB1系のTLRの経時的な変化が今回わかった.今後はPro-IL-1系の炎症にかかわる蛋白の経時的変化を計測し,TRLの経時的上昇の再現性も含めて,成長・時間によりこれら炎症関連物質がどのように発現するのか検証する方針.それが確認できれば抗炎症薬による治療効果を確認していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
脳波・電極などを使用する予定を前年度から今年度にまわしたため.多種類の免疫染色をまだ行っていないため. 追加電極・脳波アンプの購入,抗体の購入などを行う予定.
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