研究課題
てんかんの原因として皮質異形成が知られており,これらの遺伝子異常も発見されつつある.一方,遺伝子異常とは無関係の脳卒中,外傷や脳炎後遺症もてんかんの大きな原因の一つである.何故これら皮質異形成や脳病変がてんかん原性を有しているのかわかっていない.我々はこれまでの研究でラット胎児脳に冷却損傷を与えることにより世界で初めて組織学的にヒト皮質異形成に類似した局所皮質異形成を有するラットを作成した.24年度の研究で,このラットでは生後6週あたりから発作が出現し始め,約7割のラットに自発発作が生じ,脳波所見,発作症状とも成人発症のヒト内側側頭葉てんかんに類似していることを示した.25年度の研究では,ラットの自発発作出現に炎症が関与していないかを検証するために,炎症経路で重要な役割を果たすTLR4の免疫染色を経時的に行い,皮質異形成モデルラットの海馬にてTLR4の染色強度の有意な上昇が生後2週目からみられることを見出した.26年度は,異常神経ネットワークの形成が関与していないかを検証するために,細胞間ネットワークにおいて重要な役割を果たすCx43の染色を生後2週目,3週目,5週目,10週目で行い,densitometryによる半定量的解析にて皮質異形成ラットモデルとシャム手術ラットの海馬でのCx43の発現を比較した.その結果,皮質異形成モデルラットの海馬にてCx43の染色強度の有意な上昇を生後2週目,3週目,5週目,10週目で認めた.この結果から,皮質異形成モデルラットの海馬自発てんかん発作の発症の機序として,Cx43の発現の上昇に関連した興奮性の異常神経ネットワークの形成が背景にあることが示唆された.また長時間ビデオ脳波モニターを行った患者103人中,難治性あるいは原因不明のてんかん患者16人で髄液検査を行い,4人で蛋白上昇を認め,難治化に炎症が関与している可能性難が示唆された.
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