平成27年3月末現在、40名を超えるてんかん患者のデータを、和歌山県立医科大学脳神経外科、神経内科、神経精神科の協力を得て集めることができた。これらの中にはてんかん症状の改善を目的とした外科的治療を受け、その後の経過を追跡しているものもある。また、10名以上の患者の協力を得て、安静時脳活動による機能的神経ネットワーク構造解析結果の再現性を検討した。また、健常人のデータは今後臨床応用をめざすうえで欠かせないが、200名を超える若年成人と約70名の老齢者のデータを収集することができた。 機能的神経ネットワーク構造解析においては、グラフ理論による機能的結合の評価方法に改善を加えた。これまでは、いわゆる機能的結合の加重平均値をそれぞれの領域の特徴として解析を行ってきたが、脳全体を8000-9000のノードに分割し、すべての組み合わせの機能的結合データを保存することができるようになった。これによって、高度なグラフ理論に基づく解析が可能となった。平成26年度は特に、正規化αセントラリティーを応用することが可能となった。これにより、脳のそれぞれの領域が局所的あるいは全体的にどのようにネットワークを構成しているかを連続的に調べることが可能となった。その結果、てんかん患者に共通するネットワーク構造異常をとらえることに成功した。この結果は、平成27年6月に行われる生体磁気学会にて報告する予定である。また英文論文も投稿予定である。 平成24年度から3年間の研究を通して、てんかん患者の機能的神経ネットワークには特有の異常がありこれを正確に評価することができれば、診断および治療に非常に有用であることがわかった。よって、今後てんかん診療に関わるすべての診療科を結集して発展的に研究を進めていく予定である。
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