研究課題/領域番号 |
24591305
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
本多 祥子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40287313)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、本研究を遂行する上で基盤的知識となる正常ラット嗅内野から海馬への投射様式を形態学的手法で調べ、原著論文および学会発表で報告した。具体的には、まず嗅内野側の起始細胞の分布を調べる目的でラットの海馬体各部位に逆行性トレーサーであるWGA-HRPもしくはCTBを注入し、その結果逆行性標識された細胞体の分布領域や数を嗅内野全域を表す二次元展開図もしくはヒストグラムで示した。さらに嗅内野の個々の海馬投射ニューロンの軸索形態を観察する目的で、蛍光タンパクGFPを発現する遺伝子を組み込んだ組換えシンドビスウイルスベクターをラット嗅内野に注入し、順行性に可視化された嗅内野各層の単一ニューロンの軸索分岐様式を解析した。この結果、嗅内野から海馬体への投射における起始細胞分布領域は、おおよそ嗅脳溝に平行な長軸方向のバンド状領域に広がり、嗅脳溝に対し近位ー遠位のバンドがそれぞれ海馬体の長軸(中隔ー側頭葉軸)方向に対応する部位対応関係を持っていることが分かった。さらに嗅内野単一ニューロンの軸索分岐を観察した結果、過去に報告された嗅内野II層ニューロンだけでなくV層ニューロンからも海馬歯状回へ投射する軸索線維が多数認められ、これらはII層ニューロンの終末分岐とは異なる特有の終末分岐形態をもって歯状回分子層に終止していることが分かった。上記の結果は、次年度以降の嗅内野傷害実験を効率よく行う上で必須となるイボテン酸注入部位およびウイルスベクター注入部位の座標決定に重要である。実験計画当初は嗅内野の歯状回投射起始細胞層としてII層のみに注目する予定だったが、今回の結果からV層細胞も起始として考慮すべきと考えられ、イボテン酸やウイルスベクターの注入部位、量などを改めて見直す必要があると分かった。今後さらに嗅内野II層ニューロンの歯状回における軸索終末分岐形態についてもデータを集める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は早期に片側嗅内野傷害モデルラットの作成手法を確立することができ、これと共に計画していた正常な嗅内野ー歯状回投射の全貌(起始細胞の分布と各細胞からの終末分岐形態)を解明するという目標を達成すべく研究を行ってきた。結果として嗅内野ー歯状回投射の起始細胞分布の全体像が見えてきた。さらに単一ニューロンの軸索形態解析の結果、当初は歯状回への主要な投射起始細胞と言われる嗅内野II層にのみ注目する予定だったが、嗅内野V層からも歯状回への投射があり、これはII層に比べれば少ないとはいえ無視できない量であるということが新たに判明した。嗅内野II層単一ニューロンの歯状回における軸索終末形態についてはさらにデータを集める必要があるが、平成24年度の実験計画内容はほぼ達成できており、本研究の目的を達成する上で問題なく順調に親展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成24年度に不足していた嗅内野II層ニューロンの歯状回における終末分岐形態のデータを十分に集め、V層ニューロンの終末分岐データと合わせて正常ラットの嗅内野ー歯状回投射様式の全貌をまとめる。次に当初の平成25年度研究実施計画通り片側嗅内野傷害後のウイルスベクター注入実験を繰り返し行い、成功例数を増やしてデータを取得していく。実験計画当初は嗅内野II層ニューロンのみの軸索分岐データを取る予定であったが、平成24年度の研究結果から嗅内野V層ニューロンのデータも取得すべきと考えられたため、その対応策としてイボテン酸注入部位を局所に限局させて嗅内野浅層・深層に打ち分ける、ウイルスベクター注入部位・量や生存期間などの条件を変えて嗅内野浅層だけでなく深層のニューロンも同時に可視化できるように工夫する等を予定している。現在、傷害実験に必須の薬物であるイボテン酸の入手が困難な状態であるが、今後も長期的に困難な場合は他の薬物(ムシモルなど)に切り替える等の対応策を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度計画していた傷害実験に必須の薬物であるイボテン酸を購入する予定だったが、メーカーの都合等により製造販売が一時中止されており購入することが出来なかった。比較的高額のため初年度である今年度中にまとめて購入する予定で消耗品予算に組み入れていたため、その分の金額が余剰した。次年度以降に改めてイボテン酸(もしくはこれに代わる薬品)の購入を検討しているため、この金額を次年度使用として予定している。
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