平成26年度は、①これまでの年度と同様に正常ラットにおける嗅内野―海馬体投射関係の詳細を解析しつつ、②当初の研究目的に準じて片側嗅内野傷害モデル作成実験を遂行した。更に今後の研究展開に関する準備として③マーモセットにおける嗅内野―海馬体線維連絡の解析を開始した。 ①に関しては、前年度までに明らかにした「海馬台錐体細胞層における各種皮質投射細胞分布がサブレイヤー状の分布様式を呈すること」についてまとめ、原著論文として発表した。更にGFP発現ウイルスベクターを用いた単一嗅内野ニューロンの軸索分岐形態のトレースを3次元再構築する作業に着手しており、これを平成27年7月の日本神経科学大会シンポジウムにて発表予定である。 ②嗅内野傷害モデル作成に関しては、昨年度までのデータを元に、当初計画していたイボテン酸微量注入による嗅内野局所の傷害よりも、嗅内野全層を含む広範囲かつ確実な傷害作成とその後の十分な回復期間に留意して実施した。しかし回復期間が長くなるとラット頭蓋サイズが変化しアトラスとの誤差が大きくなるため、片側嗅内野傷害した同一個体で正常側嗅内野の狙った座標にトレーサーを注入できる率は当初より低くなる。成功例として十分な例数を得るために、今後も実験継続が必要と考えられる。 ③当初の計画に加え平成26年度はマーモセットにおけるトレーサー注入実験を試験的に遂行した。今後の研究計画として、齧歯類で認められる片側嗅内野傷害後の歯状回投射神経再支配現象が霊長類にも認められるかどうか、認められるとすればその軸索形態変化の特徴はどのようなものかを明らかにしたいと考えており、まずはマーモセットの正常な嗅内野―海馬体投射関係を明らかにすべく実験に着手しつつある。まだ例数が少ないが、現時点で確認できた投射関係をまとめ、平成27年3月の日本解剖学会・生理学会合同大会シンポジウムにて概要を発表した。
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