研究成果の概要(和文):パーキンソン病の診断に有用なバイオマーカーは確立されていない。パーキンソン病の病態生理は基底核運動回路の機能結合の変化であり、機能結合解析で表現しやすい。実際私共は、機能的MRI(fMRI)と機能結合の一方法(共分散構造解析、Structural Equation Modeling: 以下SEM)を用いて、健常人で回路の可視化に成功した。この研究では、健常人、パーキンソン病患者、症候性パーキンソニズムにおける基底核運動回路の機能結合を比較検討し、パーキンソン病特有のバイオマーカー確立を目的とした。方法は高齢健常者、パーキンソン病患者、症候性パーキンソニズム患者各々12例を対象とした。課題は左手指の複雑連続運動(拇指に順に示指、中指、薬指、小指を合わせ、2回グーパーを作り、次に拇指に小指、薬指、中指、示指を合わせる。これを40秒間繰り返す) を自分のペース (できるだけ遅く、少し遅く、自分のペース、少し速く、できるだけ速く)で施行しながら、ブロックデザインのfMRIを撮像した。さらに解析ソフトを用いて機能結合解析(SEM)を行い、各群における基底核運動回路の機能結合モデルを作成、比較した。 その結果、高齢健常者の基底核運動路内では被殻、淡蒼球、視床、補足運動野、一次運動野間に有意の機能結合(径路係数)を認めた。一方パーキンソン病患者および症候性パーキンソニズム患者では、視床と補足運動野、視床と一次運動野との機能結合が低下していた。さらに症候性パーキンソニズム患者では被殻と淡蒼球間の機能結合が低下していた。以上の機能的MRIの研究より、視床と大脳皮質運動野との機能結合低下が、パーキンソン病および症候性パーキンソニズムのバイオマーカーとなることが判明した。さらに両者の鑑別として被殻と淡蒼球間の機能結合がバイオマーカーとなることが示唆された。
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