研究課題/領域番号 |
24591307
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研究機関 | 公益財団法人額田医学生物学研究所 |
研究代表者 |
額田 均 公益財団法人額田医学生物学研究所, その他部局等, その他 (60118833)
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研究分担者 |
八木橋 操六 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40111231)
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キーワード | 末梢神経障害 / 高血圧 / 糖尿病 / SHR / 高血圧臓器障害 / 糖尿病合併症 / 神経伝導速度 / 末梢神経病理 |
研究概要 |
研究目的・方法:本研究では高血圧および糖尿病の動物モデルを使用し、1)高血圧による末梢神経障害発症メカニズムの解明と、降圧による末梢神経保護作用、および2)高血圧合併の有無による糖尿病性末梢神経障害の発症・進展・治療の相違について検討する。これらの各課題につき、高血圧自然発症ラット(SHR)および糖尿病モデルラットを用い、電気生理学的機能評価(神経伝導速度など)、分子病態学的検査(マイクロアレイ、RT-PCR等)および病理学的検査(脊髄、後根神経節、末梢神経、腎臓、膵臓の免疫染色、電顕など)を実施する。 実施状況:課題1「高血圧性末梢神経障害発症機序の解明」。1-1)「高血圧重症度・期間と末梢神経障害の関連」の結果については、平成24年度に報告したように、長期の重症高血圧は細小血管障害を伴った末梢神経障害を起こす。 平成25年度には課題2「高血圧の糖尿病性末梢神経障害へのインパクト」についての検討を開始し、SHRを用い糖尿病性末梢神経障害に対する高血圧の影響を明らかにした。 結果:SHR及びWistarラット生後48時間以内のSTZ投与により高血圧合併糖尿病群(SHR+DM)と糖尿病群(DM)とし、対照群ににSHR、WKY、Wistar群を含め、坐骨・脛骨、腓腹神経について神経伝導速度(NCV)及び形態学的変化を検討した。その結果、SHR+DMが最も高度な、次いでDM、SHRの順で有意なNCV遅延を示した。28週齢ではSHR+DMの感覚NCVが他の4群より有意に遅延。44週齢のNCVではSHR+DMとDMの両群間に有意差はない。形態学的にはSHRの腓腹神経に神経内鞘浮腫、細小血管症などが見られ、SHR+DMで高度な軸索萎縮を認めた。 結論:高血圧合併糖尿病神経では非合併例に比し、末梢神経障害がより重症であり、感覚障害がより早期に認められる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1「高血圧性末梢神経障害発症機序の解明」:1-1)「高血圧重症度・期間と末梢神経障害の関連」の結果については、既に投稿し現在査読結果待ちである。1-2)「SHRにおける末梢神経障害の発症機序」については、SHRの下肢末梢神経(坐骨・脛骨神経)について、マイクロアレイによる遺伝子発現の解析を行った。その結果、myosin heavy chain 2、myosin heavy chain 7、myosin light chain 3、myosin 6の有意な上昇が見られた。Myosinについては、末梢神経の髄鞘形成に関与することが示唆されており、今年度は、これらのmyosinについて、免疫組織染色、RT-PCRでの解析を予定している。1-3)「SHR高血圧性末梢神経障害に対する降圧療法の効果」:本課題については降圧剤の入手に時間がかかったため、本年度に実施予定である。 課題2「高血圧の糖尿病性末梢神経障害へのインパクト」本課題については前記「研究実査期の概要」に述べたとおり平成25年度から開始し、今年度も継続する。 交付申請書の研究目的「○2研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」に述べた仮説について以下の点は解明出来た。高血圧性末梢神経障害について:1)高血圧は大血管障害のみならず、腎臓・網膜と同様に末梢神経においても細小血管障害(神経内鞘細小血管の基底膜重層化など)を発症する。この神経内鞘の細小血管障害は、高血圧性末梢神経障害の発症に関与する可能性がある。2)高血圧を合併する糖尿病性末梢神経障害は、高血圧を合併しない糖尿病性神経障害に比し、早期から発症し進行が早く重症化し、感覚障害がより早期から認められる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であり、課題1-3の実施のみならず、課題1-2および課題2のまとめと論文作成を行う。 課題1-3:「SHR高血圧性末梢神経障害に対する降圧療法の効果」については、SHR8週齢よりアジルサルタンを投与(1mg/kg/day、武田薬品工業より提供)、 28週齢に末梢神経機能・形態評価をし、その末梢神経障害発症予防効果について検討する。さらに、SHRにおいて末梢神経障害発症後(28週齢以降)から降圧薬(ARB)投与を開始し、神経障害の改善の有無、および末梢神経保護効果について検討する。アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体ブロッカー(ARB)には、降圧作用を超えた臓器保護作用が注目されており、末梢神経に対する同様な効果も期待される。 研究計画につての変更はなく、研究を遂行する上での課題も特にない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究分担者への分担金を平成26年度に支払うため。 研究分担者への分担金に使用。
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