研究課題/領域番号 |
24591308
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
根本 正史 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (80370980)
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研究分担者 |
木暮 信一 創価大学, 工学部, 教授 (10133448)
川井 秀樹 創価大学, 工学部, 准教授 (90546243)
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キーワード | 神経活動・脳循環カップリング / 内因性光学信号 / 脳機能マッピング / 神経可塑性 |
研究概要 |
本研究の目的は,覚醒下,自由行動中の小動物において,カプセル内視鏡の技術を応用し,何ら束縛することなく脳活動をイメージングする技術を開発することである。① 初めに麻酔中のげっ歯類において,感覚刺激による脳活動領域を,カプセル内視鏡のイメージから血液量の変化や血液酸素化度の変化によってマッピングする。② 慢性硬膜下電極とカプセル内視鏡を埋め込んで,両信号を同時に取得できるテレメトリーシステムを構築。③ 無麻酔,無拘束下で両信号を取得し,神経活動と脳循環代謝に関してその動的カップリングを解明する。 (1) 現在,市場で手に入るカプセル内視鏡は,ギブンイメージング社製とオリンパス社製のものがあるが,カラーフィルター,自動調光機能,出力フォーマット,LED波長など,ヘモグロビン濃度の定量化の為には最適化が必要で,また,電池交換をしなければ繰り返し使用できないことなどの問題があり,企業担当者と打ち合わせたが,新たな改造を必要とすることから承諾が得られなかった。(2) 能力は劣るが,産業用の超小型CCD, CMOSビデオカメラで代用できないか,他企業と交渉中である。 (3) これらの機器開発と並行し,様々な麻酔下のマウス,ラットにおいて,実体顕微鏡と冷却CCDカメラを用いて狭帯域光イメージンクによるヘモグロビン濃度変化のマッピングを行った。神経活動・脳循環代謝相関において,マウスとラットの種差の報告(Parakash, 2007)があるが,麻酔感受性と呼吸抑制に起因したみかけ上の種差でないか比較検討中である。(4) 麻酔下のマウス,ラットにおいて,大脳皮質,海馬,扁桃体に微小電極を挿入,後発射が生じるように高頻度電気刺激を繰り返し行い,キンドリング現象(広義の可塑的変化)が生じていることを微小電極法と上記イメージング法で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成する為に,カプセル内視鏡の機能の最適化が必要であった。しかし,理論的に,どこを変更すべきかわかっているものの,大手企業から技術提供を引き出すことが困難であった。一方,従来の方法ではあるが,頭部を固定して神経活動と脳循環代謝のイメージングを行い,脳活動の基礎状態をモニターしながら脳活動の可塑的変化明らかにする実験については,並行して進んでいる。以上の理由で,当初の実施計画からやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
カプセル内視鏡の導入の諸問題に対して,今後,以下の方策でアプローチする。 神経活動に伴うヘモグロビン濃度の変化,酸素化度の変化による脳活動を, SDカード記録方式の超小型(モノクロ/カラー)CCD/CMOSカメラと,波長を調整したLED光を組み合わせて,麻酔したげっ歯類の活動領域のマッピングを行う。実際には,この実験に先立ち,実体顕微鏡とRolera-EM-C2 冷却CCDカメラを用いて,活動領域の通常のマッピングを行ない,両者の結果とを比較する。次のステップとして,覚醒下,自由行動中のげっ歯類の頭部に埋め込み,活動領域のマッピングが可能かどうか試みる。以上から,原理的にカプセル内視鏡の技術を用いて,血液量の変化や血液酸素化度の変化による脳活動領域のマッピングが高品質で得られる可能性があることを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
大手企業のカプセル内視鏡システムを購入する予定で,物品費が高く見積もられたが,内視鏡システムの購入を断念せざるをえなくなり,代替物品となる超小型CCD/CMOSカメラへ変更と,さらに必要な他の機器にあてがわれるなどして,最終的には少額の助成金が次年度へ繰り越された。 最終年度は,脳循環代謝のイメージ信号と神経活動の電気信号をモニターする為のテレメトリーシステム構築の為に,予算を調整して使用していく計画である。
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