研究課題/領域番号 |
24591309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
上原 敏志 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60505098)
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研究分担者 |
豊田 一則 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (50275450)
峰松 一夫 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 副院長 (60200094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 一過性脳虚血発作 |
研究概要 |
MRIのFluid-attenuated inversion recovery hyperintensity (FVH) は頭頸部動脈の閉塞性病変に起因する急性期脳梗塞患者でしばしば見られ、停滞もしくは遅い血流を示唆する所見であると言われている。しかし、TIA患者におけるFVHについての検討は少ない。そこで我々は、TIA例におけるFVHの頻度、関連因子、およびTIA再発や脳梗塞発症の予測因子としての重要性を明らかにするために、当エンターに入院したTIA例におけるFVHについて検討を行った。対象は、2005年1月~2011年12月までに当センターに入院したTIA例のうち、発症後24時間以内に頭部MRIおよびMR angiographyを施行した202 例(女性76 例、平均年齢69歳)であった。41例(20%) にFVHを認めた。多変量解析の結果、心房細動 (AF)、頭頸部動脈の閉塞性病変、および片麻痺がFVHと有意な関連因子であった。FVH陽性であった患者のうち23例に中央値7日後のMRIを再検したところ、15例(65%)ではFVHが消失していた。FVHが一過性であった例では持続して見られた例に比べて、AFが有意に多く、頭頸部動脈の閉塞性病変が有意に少なかった。90日以内のTIA再発もしくは脳梗塞発症が13例にみられ、FVH, 頭頸部動脈の閉塞性病変、特にFVHと頭頸部動脈の閉塞性病変の併存とイベント発症との間に有意な関連性が見られた。今回の検討により、発症後早期のFVHの存在が、TIAの診断、TIA機序の同定および再発リスクの予測に役立つことが示唆された。(Kobayashi J, Uehara T, et al. Stroke, Epub ahead of print)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究実施計画として、(1)救急隊を対象としたTIAに関するアンケート調査、(2)TIAが先行した脳梗塞例に関する前向き研究、(3)欧州のTIA診療体制の情報収集を予定していた。しかし、前向き研究を行う前にまず後ろ向き研究によってわが国のTIA例の特徴を明らかにすることが重要であると考え、当センターに入院したTIA例についての後ろ向き研究を実施した。その結果、TIA例における画像検査、その中でもFVHの有用性を明らかすることができた。また、TIA後の脳梗塞発症の有無による背景因子および血液検査所見の比較検討について、データ収集をして現在解析を行っているところである。当初の研究実施計画とは少し異なってしまったが、次年度以降の研究を行ううえで非常に重要なデータを得ることができ、英語論文化することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在解析中である後ろ向き研究(当センターに入院したTIA例を対象とした脳梗塞発症の有無による比較検討)を進めて研究成果を学会発表および論文化する。さらに、TIAが先行した脳梗塞例に関する前向き研究、TIA例における頭部MRI-検査所見に関する前向き研究を開始する。当初は本年度に行う予定であった救急隊を対象としたTIAに関するアンケート調査も今後実施する。2013年11月15, 16日に東京で開催されるInternational TIA/ACVS Conferenceに参加して研究成果を発表するとともに意見交換することにより海外、特に欧州のTIA診療システムに関する情報を得る予定である。国際学会(International Stroke Conference、European Stroke Conference等)で研究成果を発表し、英語論文化することを義務付け、国際学会発表抄録の提出期限に合わせてタイムテーブルを作成し、研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
TIAに関する後ろ向き研究, TIAが先行した脳梗塞例に関する前向き研究、およびTIA例における頭部MRI-検査所見に関する前向き研究を実施するうえで、研究協力者への謝金、解析ソフトなどの物品の購入、研究成果を学会で発表する際の交通費、論文化する際の校正、別刷代などの諸経費に使用する。また、救急隊を対象としたTIAに関するアンケート調査における印刷代、郵送代、解析等の諸経費として使用する。 本年度、まず後ろ向き研究を行い、当初本年度に実施予定だったアンケート調査を次年度実施に変更したため、アンケート調査にかかる費用分が今年度の残額となった。
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