研究課題
我が国では心血管病などの動脈硬化性疾患が増加しているが、近年やはり増加が続く慢性腎臓病患者において、有意に心血管病罹患率が高いことが疫学的に明らかになっており、「心腎連関」と称されている。我々は腎糸球体ポドサイトならびに血管内皮細胞に発現する遺伝子としてセマフォリン3G (Sema3G)を同定した。既にセマフォリンは様々な疾患の「鍵因子」として注目されており、我々はSema3Gの機能が腎と心血管の共通病態をつなぐ可能性を想定し、Sema3Gノックアウト(KO)マウスを作成してその表現型を解析した。その結果、腎臓においては、1.Sema3G KOマウスの糸球体ではポドサイトの細胞形態が変化しアルブミン尿が微増すること、2. Sema3G KOマウスに糖尿病や炎症刺激などを負荷すると腎障害が野生型に比べて増悪すること、3. Sema3G KOマウスから樹立したポドサイトでは野生型ポドサイトに比べ、炎症性サイトカインの分泌が亢進すること、4.Sema3G蛋白を野生型ポドサイトに添加すると、炎症刺激によるシグナル活性化を抑制することなどを明らかにした。また心血管においては、5.動脈硬化モデルであるApoE KOマウスと交配したApoE/Sema3GダブルKOマウスに高コレステロール負荷を行うと、ApoE KOマウスに比べ動脈硬化巣が増大し、in vitroでは単球/マクロファージの増殖や内皮細胞への接着を抑制することを見出した。これらの結果から、Sema3Gは腎障害および動脈硬化の両病態に抑制的に関与している可能性が示唆された。今後さらに研究を進め、Sema3Gが慢性腎臓病および心血管病の各種病態に関与する機序、ならびに心腎連関に対して果たしうる役割を解明し、さらには将来的にリコンビナント蛋白や発現遺伝子導入などによるSema3Gを介した治療の可能性についても検討を行いたい。
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