研究課題
糖尿病性血管合併症の発症・進展機序には、慢性的な高血糖のみならず、間歇的な血糖上昇による、酸化ストレスや軽度の慢性炎症を含む多くの因子が関与していることが明らかとなってきている。最近、適度な運動習慣は、抗酸化作用や抗炎症作用を介して、糖尿病性血管合併症の進展抑制に大きく貢献することが証明されたが、臨床の現場では、様々な理由で運動を実行できない場合が多い。2型糖尿病が既に若年者にまで蔓延していることを考慮すれば、運動療法を模倣できる特効薬の開発は急務である。我々はこれまでに、3種のMAPキナーゼがインスリン抵抗性に与える影響について詳細に検討し報告してきた。運動を模した効果を得る方法を開発するため、我々が得意とする特殊なタグを用いた手法で、運動とMAPKを繋ぐ因子を見出すことを目的に研究を開始した。2種類の独立したエピトープタグ(myc:MEQKLISEEDとFLAG:MDYKDDDDKD)を、TEVプロテアーゼ切断配列(ENLYFQG)とスペーサー配列を用いて直列に連結させた構造を持つ特殊なタグを用いることによって、目的の蛋白に結合している蛋白質を極めて高純度に調整することが可能となる。平成24年度には3種のMAPキナーゼ蛋白に上記の特殊なタグを取り付けた蛋白をコードするcDNAを作成後、これらの蛋白を発現するアデノウイルスを作成、大量に増幅した後に濃縮精製した。平成26年度は、平成25年度に引き続き、精製したアデノウイルスをマウスのヒラメ筋に直接注射することで、目的の蛋白質を骨格筋に過剰発現させる手法を確立させるため、詳細な条件検討を繰り返した。筋肉に過剰発現させた後は、運動させた群とさせない群の両群から筋肉を採取後に可溶化し、上清を精製処理後に得られたサンプルをLC/MSにより解析する。Bait蛋白に結合する蛋白質の網羅的解析を行い、最も有意な蛋白の同定に繋げていく。
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Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.
巻: 308(2) ページ: G151-8
10.1152/ajpgi.00198.2014.