研究概要 |
mTORシグナルは、過食肥満でシグナルが亢進し、糖脂質代謝異常と深い関係があるものと考えられている。mTOR, LST8, Raptorなどで構成されるmTORC1は、p70S6Kや4EBP1を介して蛋白合成を促進し、mTOR, LST8, Rictorなどで構成されるmTORC2はPDK2の候補と考えられている。我々は、これまでの研究で、mTORC1とmTORC2に共通の構成蛋白LST8が下流シグナル伝達に重要な役割を果たしていることを明らかにし、糖尿病、インスリン抵抗性の病態解明、治療のターゲットとなる可能性を示してきた。今回は、そのLST8に結合する新規蛋白protein XをMEFタグを用いたpulldown assayでクローニングしたので、その生理的意義を明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
Protein X がmTORC1、mTORC2あるいは、未知のmTORC3いずれに属するか明らかにする。 mTORC1: mTOR, LST8, Deptor, Raptor, PRAS40, IPMK mTORC2: mTOR, LST8, Deptor, Rictor, Sin1, PRR5 tag付のProtein Xをアデノウイルスを用いて培養細胞に過剰発現し、tagの抗体で免疫沈降し、LST8との結合を確認する。 GST-Protein X 融合蛋白を大腸菌から精製し、GST-beadsに結合させたものと、マウス肝のlysateをincubationし、pulldown assayを行う。GST-Protein X 融合蛋白に結合してくるmTORC構成蛋白をWestern blottingで特定する。 Protein XとLST8, mTORC蛋白との結合部位を特定し、それらの結合を阻害する変異体を作製して、Protein XとmTORCの結合の役割を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
各シグナルの活性を調べるために、特異的なセリン・スレオニンのリン酸化抗体を用いることが多い。これらのリン酸化抗体は、自前での作成が極めて困難であり、購入するための費用が必要となる。 Protein X の過剰発現アデノウイルス、shRNAアデノウイルスを作製中であり、試薬代が高価であり多額になる。 今回のLST8新規結合蛋白は、mTORC3を構成している可能性も高い。その場合には、他のmTORC3構成蛋白の同定が重要であり、LC/MS解析が必要である。 その他には、siRNA、DNA, RNA 精製用の試薬、RT-PCR, Western blotting 用の試薬など基本的な実験の試薬代、消耗品代が必要である。
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