研究課題/領域番号 |
24591317
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
恒枝 宏史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
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研究分担者 |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / エネルギー・糖質代謝異常 / 生物時計 / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
体内時計による概日リズムは生理機能の維持に必須であり、体内時計の撹乱は肥満や2型糖尿病のリスク要因である。そこで糖代謝に関わる各臓器の日内リズムを調節する機構を明らかにするため、睡眠・覚醒リズムやエネルギーバランス調節に関わる視床下部オレキシン神経系の生理的意義を検討した。まず、6ヶ月齢の野生型(WT)マウスとオレキシン欠損(OXKO)マウスの血糖値の日内変動を解析した結果、WTマウスの血糖値は 暗期(覚醒期)で増加し明期(休息期)で低下する日周リズムを示したが、OXKOマウスでは日内変動が消失し、特に明期において高血糖と高レプチン血症が認められた。なお血清インスリン値やコルチコステロン値には異常は認められなかった。小動物代謝測定システムを用いてOXKOマウスの摂食量、飲水量、自発運動量、酸素消費量およびエネルギー消費量の日内変動を解析した結果、これらの日内変動の振幅はWTマウスよりも低下したが、日内リズムの周期には異常は認められなかった。したがって、オレキシンは食事性リズムとは独立した機序で糖代謝調節に影響を与えると考えられる。また、恒明条件下ではWTマウスの血糖値の日内変動のみ障害されたことから、OXKOマウスにおける血糖リズムの異常はオレキシン欠損に伴う光同調機構と糖代謝調節機構の間の機能的連係の破綻により誘発されると考えられる。さらに、OXKOマウスの末梢組織における時計遺伝子および時計制御遺伝子の発現量をRT-PCR法で解析した結果、OXKOマウスの骨格筋では異常は認められなかったが、OXKOマウスの肝臓では暗期におけるPer2, PPARγ, PGC1αおよびNAMPTの発現に異常を認めた。以上より、内因性のオレキシンは少なくとも肝臓の日内リズムの形成を促進し、肝機能のリズムを睡眠・覚醒リズムと同調させることでグルコース恒常性の維持に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書において、平成24年度の研究実施計画に記載した通り、本年度は、オレキシンの欠損に伴う末梢時計遺伝子の発現変化の解析を行った。その結果、研究開始時点で予測した通り、オレキシン欠損マウスでは末梢組織(特に肝臓)の時計遺伝子の発現様式に異常が生じ、血清パラメータの日内変動にも異常を来すことを実証した。また、オレキシン欠損に伴うこれらの異常と明暗サイクルおよび食事リズムの関係を明らかにした。このように本年度の研究により、内因性のオレキシンが糖代謝に関わる末梢組織のリズム制御に必須であることが示されたことから、平成25年度以降も引き続き、糖尿病の新規時間治療の開発に向けた視床下部オレキシンによる体内時計の同調化機構の解明研究を計画通り実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に記載した通り、平成25年度においては、末梢時計の破綻した糖尿病モデルマウス(db/dbマウスや高脂肪食負荷マウス)に対するオレキシンの治療効果を時間薬理学的に解析する。そのため、糖尿病モデルマウスにオレキシンを脳室内投与し、投与時刻依存的に末梢組織の時計機能と糖代謝調節機能を改善するかを明らかにする。また、平成26年度においては、オレキシンによる交感神経/迷走神経のバランス変換を介する末梢時計の制御機構を解明するため、オレキシンの脳室内投与による肝糖産生の変化を指標に交感神経と迷走神経の関与を検討し、さらにその過程に末梢組織の細胞内小器官の機能変化が介在する可能性を追究する。以上のように、今後も、研究開始時点での計画通りに研究を推進していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に交付された直接経費1,600,000円はおおむね計画通り使用された結果、2,363円の残額となった。そこで平成25年度は、直接経費として交付される1,600,000円と平成24年度の直接経費の残額2,363円を合わせた1,602,363円を全て物品費として使用する予定である。なお、物品費の内訳は全て実験試薬、実験器具、実験動物などの消耗品であり、1品又は1組もしくは1式の価格が50万円以上の物品を購入する予定はない。
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