研究課題/領域番号 |
24591318
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
和田 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 講師 (00419334)
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研究分担者 |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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キーワード | PDGFRβ / Obesity / Insulin resistance |
研究概要 |
肥満に伴う脂肪組織の肥大化には、脂肪組織を支持する血管新生が重要であり、我々はこの過程にPDGFの関与を想定し検討を行ってきた。初年度の研究では、C57BL/6マウスに高脂肪食負荷を行うとPDGFの発現が増加し、またdb/dbますにPDGFR阻害剤を投与すると耐糖能が改善する事を示した。 2年目の研究では、主にPDGF及びその受容体を欠損するマウスは胎生致死であるため、マウスが生育後にPDGFRβの欠損を誘導できるconditional KOマウス(bKO)を用いて解析を行った。bKOマウスは通常食飼育下では野生型マウスと代謝表現型に変化を認めなかった。しかし高脂肪食負荷に対し、肥満抵抗性を示した。MRIを用いた体組成の解析において、本マウスの肥満抑制効果は、内臓脂肪および皮下脂肪量の減少に伴うもので、lean massには変化が認められなかった。bKOマウスの摂餌量は野生型と変化は認めなかったが、小動物代謝計測システムを用いた検討で、bKOマウスは高脂肪食負荷による暗期のエネルギー消費量の低下が抑制されており、その結果体脂肪量の増加が抑制されたと考えられた。 以上の結果と一致して、bKOマウスは高脂肪食負荷において、脂肪細胞サイズの縮小、脂肪細胞への炎症性マクロファージの浸潤抑制が認められ、その結果糖負荷・インスリン負荷試験でも良好な耐糖能・インスリン感受性を示した。 脂肪細胞の分化に対するPDGFシグナル遮断の影響を3T3L1脂肪細胞にPDGFRキナーゼ阻害剤を投与し検討したが、分化の指標となる遺伝子発現にも形態学的にも変化を認めなかった。 以上PDGFRβシグナルの遮断は、肥満における体脂肪増加を抑制し、糖代謝を改善すると考えられたた。今後そのメカニズムをさらに解明し、臨床的に応用可能となる知見の創出に努めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの表現型の解析はほぼ終了したため。しかし今後、そのメカニズムの解析を行う必要があり、その検討には時間を要することが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
bKOマウスが高脂肪食負荷に対し、肥満抵抗性を示すメカニズムとして、特に暗期におけるエネルギー消費がコントロールと比べ増大していることに起因すると考えられた。現在そのメカニズムとして、①個体のエネルギー代謝の中枢である視床下部におけるPDGF作用の消失に伴う機序、および②脂肪組織の血管新生が抑制されたことにより、脂肪組織の肥大化が障害され、これを代償するためにエネルギー消費が亢進するとした機序、の両者を想定している。次年度ではこれらのメカニズムの関与を明らかにしたい。 また肥満に伴う脂肪組織の慢性炎症がbKOでは抑制されていたが、脂肪組織の肥大化抑制に伴う機序以外に、炎症細胞および脂肪細胞への直接的なPDGFの作用に関してもin vivo, in vitroで検討することを次年度の研究課題としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
845円の余剰金は来年度に有効に使用させていただきます。 消耗品として使用予定です。
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