研究課題
本年度は1型糖尿病の膵島および膵外分泌腺組織の病変特徴をヒト1型糖尿病膵を用いて検討した。我々は既に1型糖尿病の膵島の病変の特徴は劇症1型糖尿病(FT1DM)では、エンテロウィルス感染と著明な膵島へのT細胞,マクロファージの浸潤(insulitis)であり,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)ではウィルス感染症はなく、膵島周囲へのT細胞,マクロファージの浸潤(peri-insulitis)であることをみとめている。今年度はSPIDDMとFT1DMでの病変の特徴をより分子レベルにまで深めるためinsulitis, peri-insulitisを有する膵島に発現する蛋白のproteomics analysisをlaser capture microdissectionとmass spectrometryを用いて行なった。その結果FT1DMでinsulitis部に特異的に発現する38種の蛋白を同定し,免疫組織学的にその蛋白の局在をFT1DMおよびSPIDDMの膵島のT細胞,マクロファージ,一部のβ細胞にみとめた。この成果は2013年5月および2014年5月の日本糖尿病学会シンポジウムで発表された。(Submitted for publication)ヒト膵病変のその他の特徴としてRegenerating gene protein (REG) 1αの発現と膵島の細胞の再生所見をみとめ,これを報告した(Aida K et al. Distinct cell clusters touching islet cells induce islet cell replication in association with over-expression of regenerating gene (REG) protein in fulminant type 1 diabetes. PLOS ONE9(4):e95110, 2014)。以上膵島病変に関係する分子の同定とREGの発現に関する報告は世界で初めてのものであり,極めて重要な成果といえる。
2: おおむね順調に進展している
SPIDDM, FT1DMの病理所見のみでなく,具体的な分子の同定と両病型におけるβ細胞の再生メカニズムにREGIαが関係することをはじめて発見した。モデル動物作成への重要な発見といえる。
当初の計画書にある方法でCD28欠損マウスにpoly I:CもしくはEMC virusを投与し,ヒトSPIDDMもしくは類似の膵病変を組織レベル,分子レベルで再現できる検討が進んだ。今後はヒトからマウスレベルでの分子レベルでの検討を行ない最終年度の成果としたい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
PLOS ONE
巻: 9(4) ページ: e95110
no
Endocrine Journal
巻: 60(7) ページ: 837-845