研究課題
劇症1型糖尿病は著明な高血糖とケトアシドーシスが突然に発症し、きわめて短時間で重篤化する1型糖尿病のサブタイプの1つであり、その病因は明らかではない。我々は、劇症1型糖尿病剖検膵を免疫組織学的に検討し、膵島におけるエンテロウイルス蛋白の存在を証明してきた。本年度は、さらにその病因を明らかにするため、劇症1型糖尿病患者および非糖尿病患者の膵島からlaser microdissection/mass spectrometryを用いたプロテオミクス解析を行い、網羅的に検討した。その結果、劇症1型糖尿病膵島に特異的に発現している蛋白 38種、非糖尿病膵島にのみ発現している蛋白 107種、両者に発現している蛋白 155種を同定した。そして、これらの蛋白の抗体をもちいて、劇症1型糖尿病膵島における発現を、非糖尿病者、2型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病患者の膵を対照として免疫組織学的にvaridataionを行った。その結果、自然免疫・獲得免疫やその後のシグナル伝達に関与するものとして、proteasome activator complex subunit 1、tryptophanyl-tRNA synthetase、SAM domain and HD domain-containing protein 1 、HLA-C、STAT1 、ribosomal protein L15 、serpin B6 などがみられた。免疫担当細胞の活性化・移動・浸潤に関与するものとして、plastin-2 、Ras GTPase-activating-like protein、moesin 、lamin B-1、などが浸潤細胞に発現していた。また、ウイルス感染・ウイルス増殖に関与するものとしてprobable ATP-dependent RNA helicase DEAD box hekicase 5 (DDX5)、heteogeneous nuclear ribonucleoprotein H (HNRNPH1)、 などが見られた。これらの中には炎症性サイトカインによって誘導されるものが多く含まれており、β細胞の破壊と修復に関わる多くの免疫カスケードが判明した。これらは、劇症1型糖尿病の病因がウイルス感染であることを強く示唆している。
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