研究課題
本研究は、糖尿病患者の心血管合併症の発症阻止を目指した新たな治療戦略を構築するため、早期血小板活性異常に着目し、従来の方法では測定が困難であった自然誘発微小血小板凝集塊の形成程度をレーザー散乱粒子計測法により測定し、同様に、フローサイトメトリー法による血小板細胞表面抗原(active GPIIb/IIIa, P-selectin)の発現量を測定し、早期血小板活性化異常が心血管イベントの発症リスクである可能性を縦断研究により検証すること、さらに、長期アスピリン服薬下においても充分に早期血小板活性を抑制できていない症例(アスピリン不応性症例)に対して、アスピリンから他の抗血薬の変更が早期血小板活性の抑制に有効であるのかを検証することを目的としている。本年度は、昨年度に血小板活性指標の測定を実施した311症例の2型糖尿病患者の、各種臨床データの収集をおこなった。また、1年以上の期間、アスピリン内服下においても自然誘発微小血小板凝集塊の形成を認める(アスピリンにより早期血小板活性を充分に抑制できていない)2型糖尿病患者24症例を対象に、アスピリン(100mg/日)からシロスタゾール(200mg/日)へ抗血小板薬を変更し、2ヵ月後の血小板活性抑制効果を検証する介入試験をおこなった。その結果、17症例(74%)で50%以上の自然誘発微小血小板凝集塊形成抑制を認め、うち、7症例では凝集塊の消失が認められた。同様に、血小板細胞表面抗原(active GPIIb/IIIa, P-selectin)の発現量もシロスタゾールへの変更により有意な減少が認められた。以上の成績により、糖尿病患者の血管合併症の発症抑制にアスピリンが有効ではない症例が少なからず存在すること、抗血小板薬を適切に変更することでその発症リスクを減少できる可能が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
既に311症例の早期血小板活性化指標の測定が終了し、経年的な各種臨床データの収集・解析を実施している。また、アスピリン不応性症例に対するシロスタゾールへの変更による早期血小板活性抑制効果を検証する介入試験の成績をDiabetes Care誌に発表した。
早期血小板活性化指標の測定を終了した対象症例について、その後の臨床経過に関する経年的臨床データの収集を継続的におこない、早期血小板活性亢進がその後の心血管イベント発症リスクである可能性を前向きに検証する。また、血小板凝集に関与すると考えられる血小板膜糖蛋白遺伝子、接着因子、凝固・線溶系に関連する遺伝子に関し、既報のSNPによる遺伝子多型の同定をおこない、早期血小板活性化評価指標との関連、ならびに薬剤反応性の差異との関連性を検証する。
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Diabetes Care
巻: 36(7) ページ: e92-93
10.2337/dc12-2702