研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病患者の心血管合併症の発症阻止を目指した新たな治療戦略を構築するため、早期血小板活性異常に着目し、従来の方法では測定が困難であった自然誘発微小血小板凝集塊の形成過程をレーザー散乱粒子計測法により測定し、同様に、フローサイトメトリー法による血小板細胞膜表面抗原(active GPIIb/IIa, P-selectin)発現量を測定し、早期血小板活性異常が心血管イベントの発症リスクである可能性を縦断研究により検証すること、さらに長期アスピリン服薬下においても充分に早期血小板活性を抑制できていない症例(アスピリン不応性症例)に対して、アスピリンから他の抗血小板の変更が早期血小板活性の抑制に有効であるのかを検証することを目的としている。 昨年度までは、311例の糖尿病患者の自然誘発微小血小板凝集塊の形成ならびに血小板細胞膜表面抗原発現量を測定するとともに、アスピリン不応性症例でアスピリンからシロスタゾールへ抗血小板薬を変更することにより早期血小板活性異常を抑制できる症例が少なからず存在することを報告してきた(Diabetes Care 36(7):e92-93)。本年度は、この311例の糖尿病患者の臨床検査所見ならびに心血管疾患の発症の有無に関する情報を収集するとともに、遺伝素因が早期血小板活性異常に影響を及ぼす可能性を探索するため、既報のGlycoprotein IIB/IIIa C1565T 、E-selectin G98T, A561C(Ser128Arg)、Glycoprotien Ia C807T, G873A、Glycoprotein VI T13254C (Ser219Pro)等の遺伝子多型について各症例の遺伝子型の同定を行った。現在、これら臨床検査所見ならびに遺伝子多型情報を統合し、早期血小板活性異常が心血管疾患発症に及ぼす影響を検討している。
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