研究課題
昨年度から継続してIns2-CreER/R26R-YFPマウスで作製したアロキサン糖尿病モデルにおけるヒトGLP-1アナログ製剤であるリラグルチドの効果を検討している。今年度は膵β細胞の量だけではなく、インスリン分泌機能についても解析を進めた。タモキシフェンを投与して膵β細胞を標識した雄性Ins2-Cre/R26RYFPマウスにアロキサン60 mg/kgを投与して膵β細胞傷害性の糖尿病モデルを作製した。アロキサン投与の翌日からリラグルチドを200 μg/kgの用量で1日1回30日間皮下投与した。アロキサン投与直後に経口糖負荷試験を行うと、インスリン分泌反応の消失に伴って耐糖能の著しい低下が認められた。リラグルチド投与群では、15日目、30日目ともに経口糖負荷試験時のインスリン分泌反応が部分的に回復し、耐糖能が有意に改善した。興味深いことに、30日目にリラグルチド投与を終了してさらに2週間休薬した後でもインスリン分泌反応と耐糖能の有意な改善は持続していた。このことは、リラグルチドの効果が一過性ではなく、膵β細胞に継続的あるいは不可逆的な変化をもたらした可能性を示している。リラグルチド投与群ではコントロール群に比較して、膵β細胞量が増加していることも明らかとなっているが、インスリン分泌反応の回復は量の変化だけでは説明できないことから、リラグルチドは膵β細胞の質の改善にも効果があるものと考えられた。今年度はさらに、リラグルチドの作用メカニズムを詳細に解析するため、in vitroにおけるアロキサン膵β細胞障害モデルの作製に着手した。MIN6細胞にアロキサンを処置することによって、細胞死とインスリン分泌機能の低下が誘導されることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
病態モデルにおける膵β細胞の運命についての解析を進め、量的、機能的な評価をすることができた。In vivo評価の進捗状況はマウスの生産に依存せざるを得ないが、おおむね当初予定にしたがって進展していると考えている。膵β細胞運命の詳細なメカニズム解析にはin vitroでの評価も重要であり、この点についても一定の進展が見られた。
今後は、in vivoでの膵β細胞増殖、細胞死に対するより詳しい解析を病態モデル(アロキサン糖尿病モデル)を用いて進める。また、分子メカニズムの解析には、MIN6細胞を用いたin vitroにおける検討を中心に実施する予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: 4 ページ: 331-333
10.1111/jdi.12061
巻: 4 ページ: 426-427
10.1111/jdi.12089
Diabetes
巻: 62 ページ: 4165-4173
10.2337/db12-1827
腎と透析
巻: 75 ページ: 263-267