研究課題
(1) synucleinノックアウトマウスでの糖代謝関連標的分子の同定:研究計画(1)で作成した脂肪細胞特異的synucleinノックアウトマウスを用いて、肝臓及び骨格筋においても糖代謝関連分子の発現を解析し、脂肪組織における脂肪酸蓄積の変化が他臓器の代謝に影響を与えることを明らかとした。(2)synucleinプロモータ領域のエピゲノム解析:synuclein プロモータ領域にはDNAメチル化されるCpGアイランドが存在し、脱DNAメチル化剤によって培養脂肪細胞での発現が増強されることを明らかとした。このsynuclein プロモータ領域を高脂肪食給餌マウスから経時的に単離し、バイサルファイト 処理後にDNAメチル化の割合をパイロシークエンス法にて解析することで、synuclein発現制御と肥満との関連を検討したが、肥満との明確な関連は見出せなかった。(3)microtubuleと結合に必要なsynucleinの結合部位の同定:synucleinの微小管(microtubule)との結合部位と結合に必要な残基を明らかとするため、synucleinの部分発現組み換え蛋白や微小管(microtubule)結合部位の残基を変異させた組み換え蛋白を作製し、微小管沈降アッセイにて結合に必要な残基を明らかとした。さらに結合阻害ペプチドを作成し、マウス生体内の脂肪細胞に導入することで、synucleinの生体での分子標的としての意義を検討中である。(4)synuclein結合蛋白複合体の同定:synucleinが微小管(microtubule)と結合し、さらに糖輸送担体GLUT4と微小管(microtubule)上で共局在していることを明らかとした。そこで脂肪細胞内で糖輸送におけるsynucleinの機能を明らかとするため、synuclein結合複合体を質量分析(MALDI-TOF MS)にて解析しsynuclein結合蛋白複合体を同定を試みたが、今のところ特異的な結合蛋白は見出してはいない。
2: おおむね順調に進展している
本研究の最終的な目標は、申請者が新たに見出した微小管(microtubule)結合蛋白synuclinによる脂肪細胞肥大化の制御機構を明らかとし、synuclinによる糖代謝制御機構を治療標的とした小分子化合物などの創薬や医療への応用における基盤確立にある。このためsynuclinノックアウトマウスの解析や細胞骨格との結合様式の解析を通じてsynuclinによる糖代謝制御機構を明らかとした。以上のことから当初の計画通り順調に研究は進行しているが、synuclein結合蛋白複合体の同定や脂肪細胞特異的にsynucleinを発現するトランスジェニックマウスは未だ確立されておらず、その点はさらに研究をすすめる予定である。
当初の予定通り、以下の2項目に対して研究を進める。(1)synucleinの脂肪細胞特異的トランスジェニックマウスを作製(2)synuclein結合蛋白複合体の同定さらに以上の検討に加え、synuclinの微小管(microtubule)との結合阻害ペプチドの肥満モデルマウスへの投与によって、阻害薬開発の可能性を探索する。
本年度実施予定であったトランスジェニックマウスの作製において発現プラスミドは作製できたが、動物飼育施設のクリーンアップのため、マイクロインジェクションが次年度に延期になったため。またsynuclinの微小管(microtubule)との結合阻害ペプチドの作製が結合複合体の同定が未完了なため次年度に延期になったため。(1)synucleinの脂肪細胞特異的トランスジェニックマウスの作製(2)synuclinの微小管(microtubule)との結合阻害ペプチドの作製
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