研究課題/領域番号 |
24591334
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阿比留 教生 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00380981)
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研究分担者 |
赤澤 諭 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究協力員 (50549409)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | IRF-4 / NODマウス / 1型糖尿病 / T細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、1型糖尿病モデルであるNODマウスを用いて,新しいエフェクター細胞Th17の分化成熟のための転写因子(Interferon regulatory factor-4;IRF-4)を分子標的にした治療法の開発である。 第一に、IRF-4遺伝子欠損NODバックグラウンドマウスを作製し、臨床的および免疫学的フェノタイプを解析した。臨床的には、IRF-4ホモ欠損NODマウスだけでなく、ヘテロ欠損マウスにおいて、50週齢までの糖尿病発症、18週齡での膵島炎形成、12週齡でのインスリン自己抗体の産生は、ほぼ完全に抑制された。免疫学的には、ホモ欠損NODマウスでは、CD4+T細胞では、メモリーT細胞分画、制御性T細胞分画、およびIL-17産生細胞の低下を認め、 CD8+T細胞では、GranzymeBやpreforinの産生抑制を認めた。 第二に、IRF-4のリン酸化を阻害するRhoキナーゼ阻害薬(Fasudil)(100mg/kg)を異なる週齢の雌性NODマウスに投与し、糖尿病発症抑制効果を検討した。結果、対照NODマウス(飲水のみ)マウスでは、40週齢までに、70%が発症したのに対し、4-12週齢Fasudil投与群では50%、12-20週齢Fasudil投与群では、60%の糖尿病発症であったが、統計学的に有意な発症抑制効果を認めなかった。 以上より、NODマウスにおいて、IRF4遺伝子は、CD4+T細胞、CD8+T細胞両者のEffector機能を介した自己免疫性糖尿病の病態への関与が示唆された。また、IRF-4のリン酸化阻害薬、Fasudil投与による、糖尿病発症抑制は、上記の投与方法(投与週齢、用量、投与ルートなど)では、十分な発症抑制効果を示さず、さらなる方法論の開発と、効果判定のためのサロゲートマーカーの同定が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IRF-4遺伝子欠損NODバックグラウンドマウスを作製、臨床的および免疫学的フェノタイプの解析は、予定通りの進行であり、ホモ欠損マウスでは、T細胞を介した免疫学的な機序の関与を証明した。しかし、ヘテロ欠損マウスにおいては、T細胞を介した免疫学フェノタイプの変化が乏しいにも関わらず、臨床的な機能抑制が示され、さらなる機序の解明が必要である。 一方、IRF-4のリン酸化を阻害するRhoキナーゼ阻害薬(Fasudil)による発症抑制効果は、初回の条件では十分な発症抑制効果が示されず、今後更なる治療法の改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
IRF-4遺伝子欠損NODバックグラウンドマウスを作製、臨床的および免疫学的フェノタイプの解析をさらにすすめるために、IRF-4欠損NODマウス由来の脾細胞を免疫不全NOD-Scidマウスに養子移入し,糖尿病発症をモニタリングし,野生型マウス由来の脾細胞の養子移入との比較検討を行う.特にCD4+T細胞、CD8+T細胞、およびそれ以外の免疫細胞に焦点を当てた解析を検討する。 Rho阻害薬による発症抑制法の開発のため、投与週齢、用量、投与ルートなどを変更し、 糖尿病発症抑制が確立される投与法を検証する。投与法が確立すれば、その発症抑制機序として、IRF-4を介したTh17分化成熟シグナリングの抑制の関与について証明するために、IL-17欠損NODマウスへの投与を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には,消耗品として,PCRキット・ELISAキット・FACSに使用する抗体・ヘルパーT細胞の特異的分化を目的とした細胞培養に使用する刺激抗体が必須であり,定期的な血糖値観察に血糖測定機器(血糖測定器,血糖試験紙)も必要となる. 設備備品として、実験結果を解析機器(パーソナルコンピューター)が必要である.進行中の研究成果を発表・討議するために,国内・海外学会出張のための旅費,その他の経費として,論文作製,資料印刷費,通信費が必要と考える.
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