研究課題/領域番号 |
24591339
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
福井 道明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30247829)
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研究分担者 |
長谷川 剛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00295643)
中村 直登 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40227921)
邵 仁哲 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40305587)
山崎 真裕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50309134)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アンドロゲン / インスリン抵抗性 / 脂肪肝 / 糖輸送担体 |
研究概要 |
加齢などによるアンドロゲン低下は、インスリン抵抗性を惹起し糖尿病やメタボリック症候群発症に関与すると報告されているが、その分子機構は解明されていない。本研究では、睾丸摘出マウスのインスリン標的組織(肝臓・骨格筋・脂肪組織)におけるインスリン抵抗性惹起機構を解析し、アンドロゲン低下による糖・脂質代謝異常のメカニズムを明らかにする。 【方法】オスのC57BL/6Jマウスに対し精巣摘出術(+)もしくは偽手術(-)を行い、それぞれ通常食(SD)または高脂肪食(HFD)にて飼育した。また精巣摘出術(+)高脂肪食(HFD)にテストステロンを補充した群を設けた(以下 SD+, SD-, HFD+, HFD-, HFD+ with T)。5群で腹腔内ブドウ糖負荷試験、肝臓・骨格筋におけるインスリンシグナル伝達経路遺伝子の発現量測定、および組織学的検討を行った。【結果】HFD+はHFD-と比較し肝臓TG蓄積量の増加、および耐糖能障害の悪化を示し(ブドウ糖負荷試験120分血糖値;HFD+: 422.5 ± 29.64 vs HFD-: 233.6 ± 70.8 mg/dL)、肝臓における脂質合成関連遺伝子(SREBP-1, DGAT-2, FAS)の発現量増加、脂肪酸β酸化関連遺伝子(PPAR-α, PGC-1α)および脂質分泌関連遺伝子(MTP)の発現量低下を認めた。組織学的には、HFD群にて肝脂肪変性が惹起され、精巣摘出により増強した。テストステロン補充によりHFD+で認めた代謝異常の改善を認めた。骨格筋においては精巣摘出により糖輸送担体(GLUT4)の発現量が低下していた。【総括】テストステロン低下は高脂肪食投与マウスの肝臓における脂質恒常性制御機構の破綻を介し脂肪肝および耐糖能障害を悪化させた。また骨格筋においては糖の取り込みを抑制し、インスリン抵抗性を惹起していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である、睾丸摘出マウスにおけるインスリン抵抗性の病態を解明でき、国内・国際学会で発表し、その結果を論文発表した。インスリン標的組織(肝臓・骨格筋)におけるインスリン抵抗性惹起機構を解析し、アンドロゲン低下による糖・脂質代謝異常のメカニズムを以下の手法を用いて明らかにした。 ① 糖・インスリン負荷試験 ② 肝臓組織の病理学的検索 ③肝臓・骨格筋の糖・脂質合成、代謝関連 mRNA/蛋白 (SREBP1, FAS, lipin1, DGAT-2, PPARα/γ, MTP, Glut4, Grb10, etc.) 発現量の解析 なお、小胞体ストレスマーカー(GRP78, PERK, eIF2alpha, total-/spliced-XBP1, ATF6, CHOP 等)や酸化ストレスマーカー(Cyt-c, SMP30, p47phox, p67phox)の発現量は群間で有意な変化を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①睾丸摘出マウスの脂肪組織や株化脂肪細胞3T3-L1を用いて、インスリン抵抗性関連分子(IL6, MCP1, TNF-α, PTEN, PTP1B, SOCS3, lipin1, IRS1, JNK, Akt etc.)の発現動態やリン酸化の解析 ②siRNA添加による発現低下細胞での上記mRNA発現動態 ③アンドロゲンの一次標的遺伝子の可能性がある分子をreporter gene assay、EMSA、ChIP等により解析する。④単離細胞、株化培養細胞を用いて、小胞体ストレス惹起物質として広く知られているパルミチン酸とアンドロゲン(Testosterone, DHT 等)やAR antagonistとの共培養下において、小胞体ストレス/酸化ストレス/アポトーシス関連指標の分析を行い、インスリン感受性低下に対するアンドロゲンの関与とそのメカニズムに関して追求する。⑤SMP30KOマウスとARKOマウスとの交配により新規モデルマウス(アンドロゲン低下と酸化ストレス増大)を確立し、アンドロゲン低下によるインスリン抵抗性の病態解明を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの成果について学会発表、論文発表を行う。研究費を実験動物(150,000円)細胞培養関連試薬(300,000円)Real-time RT-PCR 関連試薬 (300,000円)、Western blotting 関連試薬(200,000円)、旅費(成果発表: 100,000円)、論文作成(50,000円)に使用予定。
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