研究課題
アンドロゲン低下はインスリン抵抗性を惹起し、糖・脂質代謝異常などの生活習慣病や心血管イベント発症の重要な危険因子の一つである。豊富な臨床知見が報告されているが、その機序に関する基礎的臨床研究報告は乏しい。申請者らは、高脂肪食にて飼育した精巣摘出マウスが、肝臓における脂質/リポタンパク質代謝関連遺伝子発現異常(主として脂質合成関連遺伝子の増加とβ酸化関連遺伝子および脂質分泌関連遺伝子MTPの低下)を介して脂肪肝を呈し、インスリン抵抗性増大と耐糖能異常悪化を認めることを報告した。同マウスにテストステロンを補充すると代謝異常は改善した。また3T3-L1脂肪細胞において、テストステロンがAMPKシグナルを介しGLUT4の細胞膜への移行を促進させる機構を報告した。これらの研究結果により、アンドロゲン低下によるインスリン抵抗性惹起機構において、肝臓の脂質代謝障害や末梢組織のGLUT4を介した糖取込み作用障害が重要な役割を担っていることを明らかにした。本研究成果は、アンドロゲン低下によるインスリン抵抗性惹起機構を異なる臓器において明らかにしたため、各臓器を標的とした予防・治療技術の開発につながり、臨床的意義が非常に大きいと考える。現在テストステロンよりエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼをノックアウトしたマウスを用い、アンドロゲン低下によるインスリン抵抗性惹起機構における、女性ホルモンや性ホルモン受容体の関与も調査している。
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