研究課題/領域番号 |
24591342
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
入江 潤一郎 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70306687)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸管環境 |
研究概要 |
当該年度では食事内容の変化が腸管環境、腸管免疫に与える影響を検討した。 雄性C57BL/6マウス(4-6週令)(各群10匹)に対し、通常食、高脂肪食および抗糖尿病薬を含んだ高脂肪食を与え経過を追跡した。体重、摂餌量は週2回観察し、4週間ごとに空腹時の採血を行い血糖、血清中の肝機能、脂質プロファイル、インスリンを測定した。約12週飼育したところで各マウスの回盲部より腸管壁および便を採取し、便については便中細菌を16SrRNAのT-RFLP法を用いて解析しプロファイリングを行った。同時に小腸から腸上皮間リンパ球、マクロファージを抽出し、フローサイトメーターで表面マーカーを解析した。 高脂肪食の投与は肥満を誘導し、内臓脂肪、皮下脂肪とも増加を認めた。高脂肪食により誘導された肥満により血糖値、インスリン値は有意に増加を認めた。腸内細菌組成も各群間で差異を認めた。特にファーミキューティス門の腸内細菌群が高脂肪食の投与で増加を認め、抗糖尿病薬の投与によりこれらの細菌群の低下を認めた。一方バクテロイデス門の腸内細菌群は高脂肪食の投与で減少し、抗糖尿病薬の投与で増加を認めた。腸管免疫にかかわる細胞群では、高脂肪食の摂取でCD4陽性T細胞が腸管で増加傾向を認めた。 次に腸管の遺伝子発現を半定量PCR法を用いて解析した。MCP1に代表されるケモカインの遺伝子発現が高脂肪食の投与により亢進を認めた。また抗糖尿病薬の投与によりこれらの遺伝子発現の低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験の結果に合致するように、高脂肪食の投与ならびに抗糖尿病薬の投与は腸内細菌組成に変化をもたらし、あわせて腸管における免疫担当細胞の組成にも影響を与えている可能性が確認された。これらの腸内環境の変化が直接腸管免疫に影響しているか否かを無菌動物を利用して検討を現在行っているが、こちらも当初の計画に沿ったものになっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、無菌マウスに普通食、高脂肪食、抗糖尿病薬を投与し、腸管の免疫細胞群の変化の検討を進める。またこれらの治療法により変化した腸内細菌群を無菌マウスに与え、その菌群を移植されたマウスの腸管免疫細胞の組成の検討を進める。 次に本検討から肥満、糖尿病の病態形成に関わると考えられる腸管免疫担当細胞に対する除去抗体を高脂肪食を与えた雄性C57BL/6マウス(20週令)(各群10匹)に投与し、腸内細菌叢組成が非肥満型となるかを検証する。またその免疫担当細胞群を各治療群からソーティング抽出し、遺伝子発現を比較検討する。催炎症サイトカインなど肥満の形成、代謝異常症の悪化に関与すると推測できる遺伝子に発現変化が認められた場合、その物質に対する中和抗体を投与し同様に代謝異常症の改善が認められるかを検討する。 さらに本免疫療法を無菌下で飼育した高脂肪食を与えた雄性C57BL/6マウス(20週令)(各群10匹)にも行い代謝異常症の改善が認められるか否かを検討する。この検討により本研究で発見された免疫担当細胞、物質が腸内細菌との相互作用により作用を発揮するものであることが証明される。最後に抗糖尿病薬の効果に免疫細胞を介した腸内細菌叢の変化が必須であることを明らかとするために、リンパ球を有さないCB17-scid/scidマウスに通常食、高脂肪食および抗糖尿病剤を含んだ高脂肪食を与え経過を追跡する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス、無菌マウス 300千円 高脂肪食 100千円 遺伝子発現定量試薬一式 200千円 中和抗体 200千円 サイトカインELISA試薬 100千円
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