研究課題/領域番号 |
24591342
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
入江 潤一郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70306687)
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キーワード | 腸管環境 |
研究概要 |
無菌マウスに普通食、高脂肪食、抗糖尿病薬を投与し、腸管の免疫細胞群の変化の検討を進めたところ、無菌マウスの免疫細胞は有細菌下のマウスと大きく異なっていたが、抗糖尿病薬で変化が生じていた。これらの薬物治療法により変化した腸内細菌群を無菌マウスに与えたところ、必ずしもドナーの腸内細菌叢組成がレシピエントで維持されてはおらず、腸内細菌叢の組成にやはり免疫細胞が重要であることが明らかとなった。 次に本検討から肥満、糖尿病の病態形成に関わると考えられる腸管免疫担当細胞に対する除去抗体を高脂肪食を与えた雄性C57BL/6マウス(20週令)に投与し、腸内細菌叢組成が非肥満型となるかを検証した。抗体の投与は高脂肪食によって誘導される肥満の軽減をもたらしたが、腸内細菌叢の変化は一時的であった。抗体投与マウスでは催炎症サイトカインなど肥満の形成、代謝異常症の悪化に関与すると推測できる遺伝子の低下を認めていた。 さらに本抗体投与免疫療法を無菌下で飼育し高脂肪食を与えた雄性C57BL/6マウス(20週令)にも行い代謝異常症の改善が認められるか否かを検討している。無菌環境下での代謝異常は軽度であり、免疫療法による改善の程度は軽度である傾向にあった。最後に抗糖尿病薬の効果に免疫細胞を介した腸内細菌叢の変化が必須であることを明らかとするために、リンパ球を有さないCB17-scid/scidマウスに通常食、高脂肪食および抗糖尿病剤を含んだ高脂肪食を与え経過を追跡している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高脂肪食の投与ならびに抗糖尿病薬の投与は腸内細菌組成に変化をもたらし、あわせて腸管における免疫担当細胞の組成にも影響を与えていた。これらの腸内環境の変化が直接腸管免疫に影響しているか否かを無菌動物を利用して検討を現在行っているが、こちらも当初の計画に沿ったものになっている。また免疫細胞を介した治療介入も開始されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究から明らかとなった抗体投与免疫治療法の応用を進めていく。無菌環境では本治療法の効果が限定的であるが、有細菌下では有効であり腸内細菌の存在が抗糖尿病効果に重要であることが明らかとなっている。一方で抗糖尿病薬の効果に免疫細胞を介した腸内細菌叢の変化が必須であることを明らかとするために、リンパ球を有さないCB17-scid/scidマウスに通常食、高脂肪食および抗糖尿病剤を含んだ高脂肪食を与え経過を追跡し明らかとする。
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