研究課題/領域番号 |
24591347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
池上 博司 近畿大学, 医学部, 教授 (20221062)
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研究分担者 |
馬場谷 成 近畿大学, 医学部, 講師 (10449837)
川畑 由美子 近畿大学, 医学部, 准教授 (80423185)
能宗 伸輔 近畿大学, 医学部, 講師 (90460849)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己免疫 / ゲノム / 膵島 / 糖尿病 |
研究概要 |
「1型糖尿病においてどうして膵β細胞だけが破壊されるのか?」という根源的疑問を分子レベルで解明し、1型糖尿病の安全かつ確実な予防法・治療法構築に資する基盤情報を得ることを目的として研究を進めた。 当科管理下にある1型糖尿病患者(膵島自己免疫)、橋本病・バセドウ病患者(甲状腺自己免疫)および当院皮膚科受診中の円形脱毛症患者(毛根自己免疫)を対象として、各疾患で他臓器における自己免疫疾患の有無、家族歴、自己抗体の陽性率と抗体価、遺伝子の解析を進めた。甲状腺自己免疫疾患であるGraves病においてGAD抗体やIA-2抗体といった膵島関連自己抗体の陽性率を検討した結果、7.1%という高率に陽性を示すこと、陽性者では糖尿病の発症率が有意に高いこと、陽性者の糖尿病はより若年発症で、やせ形、インスリン治療の率が高いことが示され、1型糖尿病の臨床的を有することが明らかとなった。遺伝子解析の結果、甲状腺自己免疫単独例ではDRB1*0803-DQB1*0601の陽性率が有意に高いのに対して、GAD抗体陽性者では1型糖尿病感受性のHLAであるDRB1*0405-DQB1*0401を高率に有し、遺伝的にも1型糖尿病の特徴を有することが明らかとなった。一方、毛根自己免疫疾患である円形脱毛症では甲状腺自己免疫の合併率ならびに家族歴が高率であること、膵島自己免疫の合併は認めないこと、遺伝子解析で1型糖尿病感受性のHLAが低率、抵抗性のHLAが高率であることが明らかとなった。即ち、甲状腺と膵島の自己免疫、毛根細胞と甲状腺の自己免疫には臨床的・遺伝的に共通性を認めるが、毛根細胞と膵島の自己免疫の間には異質性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3つの課題、即ち、 ①疾患感受性遺伝子からのアプローチによる臓器特異性に関与する遺伝子の同定・解析、 ②発生工学的アプローチによる自己抗原発現調節への介入によるin vivo解析、 ③分子メカニズムからのアプローチによる胸腺における自己抗原発現調節機構の解析、 のうちで①に関する研究が順調に進み、毛根自己免疫でをある円形脱毛症に関する成果を得るとともに、遺伝子解析が進行中である。②に関する研究で中心的役を担うノックアウトマウスの樹立ならびに系統維持は完了しており、表現形に関するプレリミナリーな結果を得ている。発症率・膵島へのリンパ球浸潤などに関して当初の予想とは逆方向の結果が示唆されており、個体数を増やして確認中である。
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今後の研究の推進方策 |
・ゲノム解析:昨年度進めた各臓器特異的自己免疫疾患における相互関係の解析において集積してきたDNAサンプルに関して、各臓器特異的自己免疫疾患における候補遺伝子解析ならびにGWASで同定されている遺伝子の遺伝子型解析を進める。 ・発生工学的解析(ノックアウトマウス):既に報告しているように膵β細胞で同定されているインスリン転写因子のうちで胸腺におけるインスリン転写調節で中心的役割を担っているMafAのノックアウトマウスの背景遺伝子を1型糖尿病モデルNODマウスに置換したコンジェニック系統(NOD.MafA-/-)の表現型ならびにインスリン遺伝子発現調節機構を詳細に解析し、疾患発症と胸腺インスリンとの関連をin vivoで検証する。 ・発生工学的解析(トランスジェニックマウス):インスリン転写因子MafAをAIREプロモーター下に胸腺髄質上皮細胞特異的に過剰発現させるトランスジェニックNODマウスの作製を進める。得られたトランスジェニックマウスの胸腺におけるインスリン発現量ならびに表現型の変化を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度、遺伝子解析費・試薬購入費に関して7,244円の余剰金が発生。 平成25年度研究費1,000,000円と上記余剰金は下記研究費に使用する。 ・ゲノム解析、発生的工学的解析(ノックアウトマウス)、発生的工学的解析(トランスジェニックマウス)を進めるに際し必要となる実験試薬、及びキットの購入費用 ・DNA抽出、遺伝子解析に要する受託費用 ・研究実績発表の為の旅費
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