研究課題
臓器特異的自己免疫疾患における標的細胞を決定する分子メカニズムを解明する目的で、「1型糖尿病においてどうして膵β細胞だけが破壊されるのか?」という根源的疑問についての解析を進めた。1型糖尿病の臓器特異性を決定する遺伝子として同定した転写因子MafAのヒトにおける機能多型と1型糖尿病との関連を日本人ならびに欧米白人の多数例で検討した結果、日本人において有意の関連を認めることを証明し、英文雑誌(J Genet Syndr Gene Ther)に論文として発表した。膵β細胞特異的転写因子MafAのノックアウトの遺伝背景をNODマウスに置換した系統の解析結果を国際学会(第49回欧州糖尿病学会2013)にて発表し、論文執筆へ向けて追加データの収集を進めている。さらに、胸腺特異的MafA発現トランスジェニックマウスを2ライン樹立し、背景遺伝子の置換と表現型解析への準備を整えた。
2: おおむね順調に進展している
申請時に計画した3つの課題、①疾患感受性遺伝子からのアプローチによる臓器特異性に関与する遺伝子の同定・解析②発生工学的アプローチによる自己抗原発現調節への介入によるin vivo解析③分子メカニズムからのアプローチによる胸腺における自己抗原発現調節機構の解析のうちで、①に関しては1型糖尿病の臓器特異性を決定する遺伝子として同定した転写因子MafAのヒトにおける機能多型と1型糖尿病との関連を日本人ならびに欧米白人の多数例で検討し、日本人において有意の関連を認めることを英文誌に論文として発表した。②に関しても膵β細胞特異的転写因子のノックアウトマウスの遺伝背景を1型糖尿病モデルNODマウスに置換した系統の解析結果を国際学会にて発表し、論文執筆へ向けての追加データを収集中である。
ゲノム解析に関しては、3つの異なる臓器(膵β細胞、甲状腺、毛包)に対する自己免疫疾患の相互関係と遺伝背景に関する解析結果を論文としてまとめ、成果を公表する。発生工学的解析に関しては、ノックアウトマウスに関する追加データを集積し、成果をまとめて論文として公表する。また、胸腺特異的に膵β細胞特異的転写因子MafAを発現させたトランスジェニックマウス(AIREのBACに組み込んで導入)でコピー数の異なる2つのラインを得ており、1型糖尿病モデルNODマウスの背景遺伝子への置換をスピードコンジェニックの手法で進めており、系統樹立と表現型解析を完結する。得られた結果に基づいて胸腺における自己抗原発現調節の分子メカニズムと1型糖尿病疾患感受性の全貌を解明する。
遺伝子解析のための実験試薬購入費用が安価に済んだため。遺伝子解析、発現解析などのための実験試薬やキット類の購入費用、免疫学的解析のための抗体や試薬の購入費用に充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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