研究課題
本研究では「1型糖尿病でなぜ膵β細胞だけが破壊されるのか?」を分子レベルで解明することにより、1型糖尿病の安全かつ確実な予防法・治療法構築に資する基盤情報を得ることを目的として研究を進めた。異なる臓器を標的とする自己免疫疾患として膵β細胞自己免疫(1型糖尿病)、甲状腺自己免疫(バセドウ病、橋本病)、毛包自己免疫(円形脱毛症)の相互関係を検討した結果、1型糖尿病と甲状腺自己免疫、円形脱毛症と甲状腺自己免疫は相互関係を有するが、1型糖尿病と円形脱毛症との間には相互関係を認めないことが示された。遺伝解析の結果、自己免疫の標的細胞を決定する遺伝因子として、膵β細胞はDRB1*0401-DQB1*0405、甲状腺はDRB1*0803-DQB1*0601、毛包はDRB1*1501-DQB1*0602の関与が示された。1型糖尿病と円形脱毛症ではそれぞれの疾患の感受性HLAハプロタイプと抵抗性ハプロタイプが逆転しており、そのことが臨床的・遺伝的共通性を認めない原因の1つであることが示された。膵β細胞に対する自己免疫の原因として、免疫寛容を誘導する場である胸腺における自己抗原インスリンの発現調節機構に異常があり、転写因子MafAの遺伝子多型がMafA発現量ならびに活性の低下を介して胸腺におけるインスリン発現低下をきたし、インスリン反応性T細胞の淘汰(negative selection)不全を介して膵β細胞自己免疫につながることが示された。今回の結果から、膵β細胞特異性を決定するHLAならびに胸腺インスリンの発現調節に関与する転写因子が1型糖尿病の予防、治療の標的となりうる鍵分子であることが示された。
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