研究課題/領域番号 |
24591348
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松本 道宏 独立行政法人国立国際医療研究センター, 分子代謝制御研究部, 部長 (90467663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝臓 / 糖新生 / 遺伝子転写 / ヒストン修飾 / アセチル化 / インスリン / グルカゴン / 糖尿病 |
研究概要 |
マウス初代培養肝細胞ならびにマウスの肝臓においてGCN5の機能欠損ないし機能獲得実験を行うため、GCN5に特異的なshort hairpin RNA (shRNA)を発現するアデノウイルスベクターならびにGCN5を発現するアデノウイルスベクターを作製した。平成24年度は、非肥満マウスの肝臓に作製したshRNAベクターを用いて肝臓特異的にGCN5をノックダウンし、対照マウスとともに代謝表現型解析を行った。肝臓におけるGCN5のノックダウンにより血糖値が低下し、肝糖新生系酵素遺伝子の発現の減少を認めた。またピルビン酸負荷試験により肝糖新生能を評価したところ、GCN5をノックダウンしたマウスで著明に低下していることが明らかとなった。これらの結果からGCN5は、マウス個体での肝臓の糖新生に不可欠な分子であることが示唆された。マウス初代培養肝細胞においてもGCN5をノックダウンし、糖新生への影響を検討した。cAMPによる糖新生系酵素の発現誘導ならびに糖産生は、GCN5のノックダウンにより抑制された。また、糖新生を強力に誘導する転写共役因子PGC-1αによる糖新生誘導もGCN5のノックダウンにより抑制された。さらにGCN5の強発現は、単独では肝糖新生系酵素の発現を抑制したが、報告者らが最近GCN5と相互作用する分子として見出だした(酒井らNat Med. 2012 18:612-7)CITED2との共発現より、糖新生を誘導した。本結果から、GCN5はcAMP依存的にCITED2と複合体を形成し肝糖新生系酵素の遺伝子発現を誘導することが明らかとなった。現在、非肥満マウスの肝臓におけるGCN5とCITED2との共発現が糖新生・血糖値へ与える影響および糖尿病モデルであるdb/dbマウスの肝臓でのGCN5の機能欠損が糖尿病へ与える影響について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度に計画していたベクターの作製を終了し、マウス個体および初代培養肝細胞でのGCN5の機能解析に着手し、計画以上に実験が進行し、多くの知見を得ることができた。また、平成25年度に計画していた糖尿病モデルマウスにおけるGCN5のノックダウンの影響の検討にも着手することができた。これらの理由から上記の区分に該当すると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後GCN5のin vivoでの機能獲得実験として、非肥満マウスの肝臓におけるGCN5とCITED2との共発現が糖新生・血糖値へ与える影響を検討する。また糖尿病モデルであるdb/dbマウスにおいて、肝臓でのGCN5の機能欠損が糖尿病の病態へ与える影響についても検討し、GCN5の個体レベルでの糖代謝の恒常性維持における重要性に関する知見を得る。また、GCN5が肝糖新生系酵素の遺伝子発現を誘導する分子メカニズムについて、初代培養肝細胞を用いて検討する。特にGCN5の有するアセチル化酵素活性の標的となる分子を同定することが重要と考えており、アセチル化酵素活性を欠損した変異GCN5をコードするアデノウイルスベクターを作製し検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
アデノウイルスベクターを作製するための分子生物学試薬や肝細胞培養用試薬の購入、非肥満マウスならびに肥満糖尿病モデルであるdb/dbマウスなどの購入飼育費として使用する。次年度は設備備品の購入は計画していない。
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