研究課題/領域番号 |
24591348
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松本 道宏 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所・糖尿病研究センター・分子代謝制御研究部, 部長 (90467663)
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キーワード | 肝臓 / 糖新生 / 遺伝子転写 / ヒストン修飾 / アセチル化 / インスリン / グルカゴン / 糖尿病 |
研究概要 |
糖尿病モデルであるdb/dbマウスの肝臓におけるGCN5の機能欠損の影響を、GCN5に対するshRNAによる肝臓特異的なGCN5のノックダウンにより検討した。GCN5のノックダウンにより、肝糖新生系酵素の遺伝子発現抑制による肝糖新生の低下が起こりdb/dbマウスの高血糖が改善した。培養肝細胞におけるGCN5単独の強発現ではcAMPによる糖新生系酵素発現の増強を認めないものの、転写調節分子CITED2との共発現では増強した。この効果はアセチル化酵素活性を欠失した変異体では認めなかった。昨年得られた結果と合わせて、GCN5は糖新生系酵素の発現誘導に必須のアセチル化酵素であり、その作用を発揮するためにはcAMPとアセチル化酵素活性が必須であることが明らかとなった。 GCN5の活性調節機構を解明するため、培養肝細胞からの抗GCN5抗体免疫沈降産物中のアセチル化活性を、ヒストンH3.1ならびにPGC-1αペプチドを基質としたin vitroアセチル化アッセイにより測定した。GCN5のPGC-1αに対するアセチル化活性はcAMP・CITED2の存在下では減弱し、GCN5のヒストンH3.1に対するアセチル化活性はcAMP/CITED2の存在下で増強したことから、in vitroではGCN5はcAMP/CITED2により基質指向性をPGC-1αからヒストンへ変化させると考えられた。さらにGCN5とPGC-1αないしヒストンH3との相互作用に対するcAMP/CITED2の影響をproximity ligation assayにより、糖新生系酵素遺伝子プロモーターへのGCN5のリクルートメントに対するCITED2のノックダウンの影響をクロマチン免疫沈降アッセイにより検討したところ、in vitroでみられたcAMP/CITED2依存的な基質指向性の変化を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24-25年度に計画していた肝臓ならびに培養肝細胞における強発現ならびにノックダウンによるGCN5の代謝調節における機能の解析をほぼ終了した。また、平成25年度に計画していた培養肝細胞におけるGCN5の活性調節機構の解析も進行し、多くの新知見を得ることができた。これらの理由から上記の区分に該当すると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の研究の推進方策) cAMP/CITED2依存的なGCN5の基質指向性の変化の分子機構を、培養肝細胞を用いて明らかにする。次いで、その分子機構がin vivoにおいても作用していることを検証する。またGCN5の肝インスリン抵抗性への関与もCITED2-GCN5相互作用の視点から検証する。
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